技術よりも挨拶が成功への第一歩
現代美術の世界では、どれだけ成功しても、自由に何かをつくれるようになる日はまず来ない。仮にそれができる日が迎えられるとしても、厳しいトレーニングを積んだ後のこと。アーティストになりたい、世界に自分の名前を売りたいと思い、それを信じて美大に入学する人は多いが、その人たちに明るい未来が待っている事はまずない。
アート業界はどれだけうまくご機嫌取りができるかが問われる世界である。その対象は世間である場合もあれば、特定の個人や顧客の場合もある。そんな世界で成功するには、覚悟を持ち、ちゃんとした挨拶のできる人間になる事が第一歩となる。絵が下手であっても、挨拶の作法をゼロから学んでいく方がはるかに有効である。それが芸術の世界である。
顧客に歩み寄るべし
芸術作品は自己満足の世界で作られるものではない。営業をしてでも、売らなければならない。そのためには価値観の違いを乗り越えてでも、相手、顧客に理解してもらう「客観性」が求められる。その部分が日本のアーティスト志向の人たちの意識からは決定的に欠落している。
現代芸術は、純粋芸術であり、顧客が大金持ちということ。顧客がいてその人にお金を出してもらえるからこそそれができる。そういう認識がなければ、現代美術におけるものづくりはできない。顧客との関係性において、アーティストは、常に下からお伺いを立てる立場にある。理解してもらうには、ただただ歩み寄る。そうすることに疑問を抱かないのが、絶対的最下層にいる人間の生き方である。
いつか世間に見直してもらえるといった考えを捨てることこそが、芸術家として身を立てる第一歩、成功するための仕事術の第一歩になる。
粘り強く試行錯誤を続けよ
「ものづくりとは何か?」という問いに一言で答えるとすれば、インスピレーションである。「インスピレーションをどのように湧かせて、それをキャッチするか」そこにすべてがかかっている。
それに較べれば、絵がうまいか下手かといった問題は、はるかに小さなことである。インスピレーションを掴む感覚は、釣りとも似ている。趣味ならば、ただ釣り糸を垂らしてじっと当たりがくるのを待っているのも楽しみの一つだが、プロはそうはいかない。周囲の地形を調べたり魚群探知機を使ったりするなど、やれる限りの事をして最大限の収穫を求める。芸術にしてもそれは変わらない。
その方法は人それぞれだが、大切になるのは「徒労」。それをやることに科学的な根拠があるのかなど考えずにそれを続ける。持続する粘着性があるからこそ、それを成功に結び付けられる。