現代美術家の村上隆氏が、アーティストを目指す人たちへ向けたメッセージ。
アーティストとしての心構えや仕事術について語っています。
一見、自由に好きなことをしているかに見えるアーティストの本当の大変さがわかる1冊。
■アーティストは社会のヒエラルキーの最下層
「アーティストは、社会のヒエラルキーの中では最下層に位置する存在である。その自覚がなければ、この世界ではやっていけない。」アーティストを目指す人間であるなら、まずはこの事を知っておくべきである。
芸能ごとにはトレンドの移り変わりが必ずある。アイドルや芸人の流行り廃りを見ていればよくわかるが、現代美術のアーティストもそれは変わりない。一時的にもてはやされた後、1年や2年で誰にも見向きされなくなるのが当たり前の世界である。自分が20年間この世界にいて、少なくとも10年間は第一線にいる事ができているのは、自分がヒエラルキーの最下層にいる事をよく認識しており、その部分において全くぶれずにいるからである。
■創造力なき日本
今の日本のクリアイティブシーンは確実に衰退しつつある。その理由は、戦後刷り込まれた「ドリーム・カム・トゥルー」=「夢はいつか叶うもの」の方便の徹底が人を怠惰にしたことだと思っている。
今の若い人たちの「技術力と集中力の劣化」という労働力の低下の複合的な原因の一つに「アイデンティティを持たないことが正義である」というような哲学が彼らの中に浸透していることがある。戦後日本は、競争という言葉を排除するようにしてきた。独立心を持たない国が、馴れ合いの社会を良しとしてきたために、そうしたマインドセットが作られていった。
慣れ合い的なそれらを一つ一つ解体していく事でしか、世界と勝負していくための力は生み出せない。
アートの世界でも「描きたいものを自由に描けばいい」と教えられ、その枠内で創作を続けている人がほとんどである。しかし、そういう人たちは結局、趣味の域を抜け出せずにその創作活動を終えるだけである。
アーティストとして何より求められるのは、デッサン力やセンスなどの技術ではなく「執念」である。何があってもやり通す覚悟がなければ成功できるはずがない。
■芸術の世界で最も大切にすべきこと
芸術の世界において最も大切にするべきことは「仁・義・礼」。
仁:人を思いやること
義:利欲にとらわれず、なすべきことを選択する人助けの心
礼:礼節の心
今の若い人たちは、礼儀や恩という部分を軽視していて、自分の幸福や満足ばかりを求める自己中心主義で動いているようにしか見えない。しかし、何を行うにしても、まず「社会」というものを構成しなければ始まらない。社会が構成されていてはじめて、個々の創作活動や経済活動が意味を持つ。
著者 村上 隆
1962年生まれ。現代美術家 有限会社カイカイキキ代表。有限会社カイカイキキでは、アーティストのマネジメント、ギャラリー、ショップを運営。2008年、TIME誌「世界で最も影響力のある100人」に選出。
週刊 東洋経済 2012年 10/27号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2012年 10/27号 [雑誌] |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.2 | 4分 | |
第一章 アート業界で生きていくということ | p.19 | 16分 | |
第二章 成功するための「修行(トレーニング)」と「仕事術(ワークスタイル)」 | p.51 | 20分 | |
第三章 チャート式 勝つための戦略の練り方 | p.91 | 14分 | |
第四章 「正論の時代」における極論的人の育て方 | p.119 | 14分 | |
第五章 「インダストリー」としてのアート業界 | p.147 | 14分 | |
特別対談 村上隆×川上量生 | p.175 | 21分 |
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