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2012/12/15更新

日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場 (光文社新書)

144分

4P

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徹底した現場とトップの決断力 〜ヤマトホールディングス

震災直後から情報網が寸断される中、ヤマトグループの現地社員たちは自ら行動を起こし、各地で同時多発的に力強い支援活動を展開した。行政と直接交渉し、最終的に自衛隊をも巻き込んで実現した救援物資輸送。こうした支援活動の源には、創業以来貫かれている社訓があった。

「ヤマトは我なり」だ。社員一人ひとりがヤマトの代表であるという意識を日頃から持っている。そして、経営陣も基本的に社員を信用して任せるという方針が、社員のモチベーションを高め、顧客から高い評価を得るという好循環につながっている。

全ての社員に「ヤマトは我なり」という理念が浸透しているのは、先輩社員や顧客の言動を見て感じることからあるべき姿が心身に浸透していくという徒弟制度的な仕組みが機能しているからである。

ヤマトホールディングスは自社に何ができるのかを徹底的に考え抜き、現実的で実効性のある支援を実施した。その支援は3つの特徴からなる。

①本業を通じた支援
②社会的使命からの活動
③現場への権限委譲とそれを支えるリーダーシップ

企業が社会に価値を提供する時、組織としての「全」と社員の「個」の2つの力が求められる。この両輪がしっかり噛み合ったからこそ、企業としての力を最大化させることができた。

津波を被った写真を洗う 〜富士フイルム

震災では津波で多くの写真が流され、持ち主と離れ離れになってしまった。この状況下で写真会社にできたこと、それは写真をできるだけきれいな状態で持ち主に返す支援であった。被災者にとって、「思い出」は復興への心の支えになるはずだと考え、富士フイルムは、被災地で海水や泥で汚れた写真を洗う活動を支援する「写真救済プロジェクト」を立ち上げた。

同社は企業として義捐金および医療関連物資の供給などで総額8.3億円の支援を迅速に決断していた。しかし、メディアの報道から、被害を受けた多くの写真が自衛隊やボランティアたちによって集められ、そして洗われているという事実を知った時、多くの社員が「我々にできることはもっとあるのではないか」と感じていたという。

このような思いが後押しし、被災者からの問い合わせをきっかけに、プロジェクトがスタートした。このプロジェクトが被災地に貢献をすることができた背景には、2つの要因がある。

①社会における自社の存在意義(写真文化を守り育てていく)を再認識し、全社員の間で一体感が醸成された
②ぶれないミドルマネージャーが多くの人を巻き込みながら会社を動かした

全社員で会社の「原点」を見つめ直し、共有できたことで、富士フイルムは今後の環境変化に動じることなく、社会に新しい価値を提供し続ける企業になるだろう。