グローバル化は国家の対立を深刻化する
グローバル化は、世界経済が好調の時には各国の経済成長を加速させるが、副作用としてバブルの規模を大きくし、被害もグローバルに拡大させる。その被害が、国家の統治能力の低い新興国へと波及すると、危機はさらに複雑化する。
貿易や投資を拡大していくこと自体は、資本主義である以上、止められない現実といえる。しかし、グローバルな不均衡を放置したまま資本移動の自由化を進め、世界経済の統合を急げば、問題が起きるのは当然である。
歴史を振り返れば、グローバル化は歴史上、何度も起きては崩れてきた。100年前に起こった「第一次グローバル化」の時代にも、現代と同じようにバブルが起き、はじけると恐慌が世界的に連鎖するという事が頻繁に起きていた。そして、グローバル化がもたらす経済社会の混乱への人々の不満は、爆発を待つマグマのように蓄積されていった。
第一次グローバル化は、結局のところ戦争へと行き着いた。つまり、グローバル化は決して一直線に進む訳ではなく、その過程で国家の対立をむしろ高めてしまう傾向にある事がわかる。
保護主義の台頭が起こりうる
世界的な恐慌の拡大を防ぐには、各国が内需を拡大させる以外に方法はない。しかし、途上国でも先進国でも、政府主導の内需拡大が簡単にできない事情を抱えている。
第二次大戦後は、米国の力優位のもとでブレトンウッズ体制が樹立され、ドルを基軸とした国際経済秩序の回復がはかられた。しかし、現在では米国にそれだけの指導力はない。そもそも、これほど貿易や資本移動が盛んに行われている段階で、それに一定の制限を加えるのは容易ではない。
従って、世界は今後しばらくは、グローバル化を進めつつ、その混乱によって生じる経済的打撃を埋め合わせるための失業対策や福祉政策を増やしていくことになるだろう。しかし、財政に限度があるから、いつまでもこの路線は続けられない。
その時に何が起こるか。この先に起こりうることとして、必ず念頭におかなければならないのが、グローバル化の反転である。保護主義が急激に台頭する可能性を意識しておかねばならない。第一次グローバル化は、まさにそうした道を歩んだ。貿易や投資の拡大を進めていった結果、次第に国内政治が不安定になり、最終的には大恐慌によって極端な保護主義、ブロック化に向かった。
事実、保護主義への要求は、欧米など先進国においてすら強いものがある。特に新興国では、関税引き上げや輸入数量制限といった従来の手法に加え、輸入製品の規格適用の厳格化、輸入許可制度の導入などの動きも見られる。
これから始まるグローバリゼーションへのバッククラッシュの中で、いかにグローバル化路線を各国レベルで修正していくかという局面が始まろうとしている。