日系二世の起業家である著者が、現在の閉塞感のある日本の問題は、「チーム」が存在していない事だと指摘。その大切さを説いている。
前半は、著者の起業物語。後半は、イノベーションが生まれない日本の状況を分析し、その解決策として、チームをつくることを提案している。
■チーム不在が日本の一番大きな問題
チームはイノベーションとアントレプレナーシップの土壌となる。失敗を怖れないでリスクを引き受ける精神は、チームから生まれる。チームの本質はお互いに助け合う関係だ。今の日本には、ヘルプするという精神が決定的に欠けている。個人が、あるいは組織が自己の利益を追求することばかりが目立ち、個人と個人、組織と組織が助け合って共通の目的のために汗を流すという仕組みや基盤が乏しい。そして、社会全体にチームという発想が希薄である。
変化が激しく、不確実性が増している今の時代では、チーム不在は致命的だ。チームを作れなければ取り残されるし、グローバルな競争で勝ち残ることはできない。チームで重要なのは多様性である。日本社会でチームをつくる近道は、大胆に女性を登用することしかない。
イノベーションもアントレプレナーシップも、失敗を怖れず、リスクをコントロールする能力も、チームがあって初めて生まれる。
イノベーションの加速する世界で個人、企業、国家が生き延びるためには、異質な価値観、異質な才能、異質な文化を持つ人がチームを組んで共通の目的のために助け合うことが絶対条件となる。チームをつくる人が社会のリーダーとなり、社会を動かしていく。
日本の一番大きな問題は、このチームが不在で、組織に多様性が欠けていることである。女性の登用などすぐに可能なことからチームづくりを始めるべきだ。より抜本的には、イノベーションを生むチームの価値観が育てていく事が求められている。これこそ、国家戦略の最優先課題である。
そして、我々は変化の激しい時代に立ち向かい、計画されない人生を創造的に生きていくことが求められている。あなたこそ、アントレプレナーなのだ。
著者 齋藤ウィリアム浩幸
1971年生まれ。インテカー代表取締役 起業家 ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。 高校時代にI/Oソフトウェアを設立。テレビ会議システムなどで失敗したあと、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年、会社をマイクロソフトに売却。 日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。ドバイなど世界3カ所にオフィスをもち、有望なスタートアップ企業14社を育成している。 1998年にアーンスト・ヤング主催のアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー米国大会でヤング起業家賞を受賞。2012年に国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の最高技術責任者と国家戦略会議フロンティア分科会「繁栄のフロンティア」分科会委員を務める。
日本経済新聞 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 10/27号 [雑誌] 丸善&ジュンク堂営業本部 宮野 源太郎 |
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 6/17号 [雑誌] 日本M&Aセンター社長 三宅 卓 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
プロローグ チームをつくり、まずヘルプから | p.3 | 4分 | |
第1章 ウィリアムの冒険 | p.19 | 41分 | |
第2章 なぜ日本でチームが必要なのか? | p.97 | 28分 | |
第3章 なぜ日本でイノベーションが止まったのか? | p.151 | 15分 | |
第4章 なぜ問題解決ができないのか? | p.179 | 15分 | |
第5章 国家戦略、それが問題なの? | p.207 | 15分 | |
エピローグ 料理と例外処理と計画されない人生 | p.236 | 3分 |
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