農業生産法人「トップリバー」を設立し、9年で年商10億円の企業に育て上げた著者が、農業で収益をあげる仕組みを解説。
今までの農業の問題を指摘しながら、農業のあるべき姿を提示する。
■農業生産法人とは
長らく日本の農業は「儲からない」ものというのが常識だった。ゆえに後継者不足が深刻化して農家の高齢化が進み、廃業する農家が続出している。そんな衰退産業と化した農業の活性化に期待されているのが、農業生産法人である。
農業生産法人とは、農業経営を行うために農地を取得できる法人のことをいう。1962年の農地法改正から法人による農業経営が認められ、規制が緩和された結果、農業生産法人がたくさん設立された。
しかし、現実として、多くの農業経営法人は十分な利益をあげている訳ではない。けれど、いくつかの農業生産法人は、農業のビジネス化に成功し、儲からないはずの農業で利益をあげるようになった。トップリバーもそうした儲かる農業生産法人の一つである。
■農業にも経営感覚が必要
農業は、農家自身が価格決定権を持っていない。卸売市場に出荷する野菜は、どれほど丹精を込めて作った野菜でも、無農薬の有機野菜でも、セリにかけられて価格が決定される。相場によって価格は左右され、農家に決定権はない。そのために農家の収益は不安定である。
東北の米作農家の労働を時給換算すると、100円から200円程度のものだろうという。価格決定権を自らの手で取り戻そうと努力しないからである。大多数の農家は、つくっている作物ひとつあたりのコストも知らない。だから儲からない。
儲かる農業にするには、相場出荷ではなく、契約販売をメインとし、野菜を生産するだけでなく、営業販売まで考えた経営感覚が必要である。
■農業をめざせ!
農業に関心を持ち、農業で生計を立てたいと考える人たちにとって、今ほどチャンスの時はない。これまで規制によって、新規参入を拒まれていたが、徐々に開放されてきている。まだプレイヤーも少なく、未開の地でもある。国や県も、かなりの好条件で新規就農者にお金を出してくれるようになり、時代の流れの中で、新規就農者を呼び込み育成しようという動きが活発になっている。
但し、農業は、体力的にも、精神的にもかなりきつい仕事であることは間違いない。
・楽しい田園生活を夢見ている人には農業はできない。
・職を失ったから、とりあえず農業でもやってみるかという人には続かない。
・他人とかかわるのが嫌だから、田舎で農業でもやってみるかという人には向かない。
現実の農業は厳しい労働と長い拘束時間が求められ、自分の時間などまず持つ事はできない。定期的な休暇もとれないし、日焼けで真っ黒にもなる。
これほど過酷な状況で続けるには、農業に対する強い情熱と誇りが必要である。
著者 嶋崎 秀樹
1959年生まれ。農業生産法人トップリバー 代表取締役 大学卒業後、北日本食品工業(現ブルボン)に入社。1988年ブルボンを退社し、佐久青果出荷組合に入社(後に社長就任)。2000年農業生産法人『トップリバー』を設立。9年で年商10億円の企業に育て上げる。
帯 作家 村上 龍 |
日本経済新聞 宮城大学教授 大泉 一貫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ 農業は儲かる! | p.9 | 8分 | |
第1章 「ど素人集団」農業に挑む | p.23 | 19分 | |
第2章 「一〇〇点+二〇〇点」儲かる農業の仕組み | p.57 | 23分 | |
第3章 間違いだらけの現代農業 | p.99 | 16分 | |
第4章 儲かる農家を育成する「水戸黄門システム」 | p.129 | 16分 | |
第5章 若者よ、農業をめざせ! | p.159 | 11分 | |
エピローグ けれど、農業はそんなに甘くない | p.179 | 4分 | |
あとがき | p.187 | 2分 |