ショッピングモーライゼーションの時代
東京駅や大阪駅のリニューアルで行われているような駅のショッピングモール化は、従来の「駅ビル」とは性質が少し異なっている。東京駅や大阪駅の「ステーションシティ」化は、駅という場所の人の流れに最適化した形で飲食や各種専門店を配置するように、大幅な施設そのもののリニューアルを行っている。そして、自分たちが設計したスペースを貸し出して、テナント料を取ることを行っている。
ここ10年における東京という都市の最大の変化とは、この都市に観光目的で訪れる外国人の数の増加という部分である。2000年の時点で476万人だった訪日外国人観光客数は、2010年には861万人まで増えた。
アジアからの観光客の目当ては、日本の歴史的遺産でも名所旧跡でも自然でもなく、ショッピングである。向こうで売られている観光ガイドも、ショッピングモールの紹介に終始したつくりになっている。世界的に見ても、新しい観光地にショッピングモールを併設するケースが多く、こうした流れで東京スカイツリー及び「ソラマチ」のセットを見ると、世界の観光地のトレンドを踏まえたつくりになっていることがわかる。
鉄道駅や空港施設、テレビ電波塔は、本来公共的な都市インフラであり、単独で存在することが許された場所だが、その機能だけに特化させるのでなく、その場所に見合った収益性の高いビジネスが当たり前になっている。この背景には、事業者の民営化が影響しているが、それだけでなく流通、観光、交通といった産業における国際都市間競争という背景も存在する。
そして、公共性の高いスペースの収益化を行う場合に、ショッピングモールとして施設を作り直すという手法が選ばれている。こういった一連の現象を「ショッピングモーライゼーション」と名付けている。これは、六本木ヒルズや汐留シオサイト、東京ミッドタウンなどを見ても顕著である。
ショッピングモーライゼーションがもたらすもの
今、都市で起きていることは、ショッピングモールの論理、仕組み、思想抜きには見えてこない。現代のショッピングモールは、世界の都市やリゾートを「消費」という行為を通じてネットワークする共通プラットフォームである。
現代社会を考える上で欠かせない2つが都市と観光である。その両者がショッピングモールとして結びつくことが、どういった可能性を生むのかについては、我々が今後見守るべき事柄である。
ショッピングモーライゼーションによる都市の変化や、そこに住む人々の変化について、まだ全貌は見えていない。今後、ショッピングモーライゼーションの是非が議論される日が来ることを願う。