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2012/11/04更新

百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない (朝日新書)

146分

4P

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老舗企業の家訓・社是・社訓

社訓や家訓は、長年の経験に裏打ちされたメッセージである。日本の企業が持つべき商道徳の原点であり、現代でも生き続ける知恵ではないだろうか。そこには5つのキーワードが浮かび上がる。

①感謝
お客様や自然の恵みに対する感謝の気持ち、取引先すべてに心を込めて商いするという精神。近江商人の教えである「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を家訓・社是に置いている企業も多い。

・「御得意先と仕入先は車の両輪である」
・「価値あるものを価値づけて売る。商いは喜びの連鎖である。すなわち、仕入業者に喜ばれ、社員も喜び、そしてお客様にも喜んでもらえば、企業は存続する」

収益は一人占めせずに、バランスよく還元するという内容を盛り込むことが、企業の発展・永続につながっているのかもしれない。

②勤勉
正直でまっとうな商売を心がける、商売の本流をゆく、地道に努力していけば必ず報われる、といった勤勉努力の精神。信用を第一に考え、誠実で謙虚な経営を続けるよう戒める。

・「美味しいものを作れば、儲けはあとからついてくる」
・「信は万事の本と為す」

経営に対する高いモラルが、古くからしっかり根付いている。

③工夫
品質を最優先として、それを守り抜くこと、または技術を継承すること。あるいは、工夫を重ね、常に時代に合わせて改良を続けてゆくこと。

・「原料に勝る技術なし」
・「伝統は革新の積み重ね」
・「不易流行」

守るべきものは時代を超えて守り抜き、変えていかなければならないものは時代に応じて柔軟に対応する、という姿勢が老舗企業の永続を支えている。

④倹約
無理や無駄を省き、合理化を進めて社業発展に尽くすこと。投機や暴利に走らない、保証人にならない、むやみに拡大しない、など金銭面に関するもの。

・「出るをおさえて入るをはかる」

⑤貢献
家族や地域、社会などコミュニティに貢献すること。公共精神を持つこと。高い使命感を持って、社会や文化の発展に尽くすこと。

・「地域に必要とされる企業であれ」
・「我社の経営目的は『社会的存在価値を高めること』である」

地域のコミュニティと共存し、社会の役に立つことが永続の秘訣であるとする教えは多い。

永続の秘訣

続いていく老舗企業とは「クラシック」ではなく、「常緑樹」のような存在である。長く育ててきた幹や根はかたくなに守りつつも、常に光合成を行い、新しい葉を伸ばして、年輪を重ねてきた。

真面目に作り上げたものを、それを必要とする人たちに提供する。必要とする人たちの変化から目をそらさず、さらに求められるものを作り続ける。それが老舗企業の永続の秘訣かもしれない。伝統は守るものではなく、日々新たに創り出すものだ。