アップル、グーグル、マイクロソフトの3社の戦いを「検索エンジン」「デジタル音楽」「スマートフォン」「タブレット端末」のカテゴリーで紹介している。
Windowsの成功で大企業病に陥ったマイクロソフト、ジョブズの才覚で瀕死の状態から復活を遂げたアップル、常にユーザー体験を大切にし、成長してきたグーグル。それぞれの時代の転換点における立場や戦略、企業文化を振り返ることで、勝敗を決した要因が見えてきます。
■スマートフォン戦争
2005年の時点ではグーグルもマイクロソフトも、インターネットの未来は携帯電話にあると考えていた。但し、両社が描く未来にはわずかな違いがあった。マイクロソフトは携帯電話をExchangeのような収益性の高いバックエンドソフトウェアの付属品と位置付けていた。一方、グーグルには携帯電話ユーザーの獲得は期待できなかった。携帯電話メーカーはグーグルの検索サービスを既定オプションとして設定する見返りに、莫大な金額を要求する事がわかっていたからだ。そして、マイクロソフトが数十億ドルの現金にものを言わせて、モバイル検索を支配する可能性があった。グーグルの未来を救うには、携帯電話メーカーが望む、無料のソフトウェアを提供するしかなかった。
2006年末、携帯電話ビジネスに参入していたマイクロソフトは、市場の独占を目指していた。Windowsと同様に、メーカーはWindows Mobileのライセンスを購入して携帯電話にインストールすればいいだけの話だった。ゲイツは、モバイルインターネットの「入口」をコントロールしようとした。
2007年1月、ジョブズはiPhoneを発表する。市場の巨大さを見抜き、早期参入を狙ったのだ。当時、アップルの競合相手はRIMやノキア、Symbianのライセンス供与を受けたソニー・エリクソンとWindows Mobileのライセンスを持つメーカー各社に限られていた。
当初、アップルを深刻な脅威と見なしていた者はほとんどいなかった。アップルは音楽業界で成し遂げたのと同じことを、ネットワークでも実現しようとしていた。まず、アップルは弱小に過ぎず、ビジネスモデルは既存企業を脅かすものではないと説得する。そして、これまでのビジネスを完全に破壊するのだ。
iPhoneは携帯電話の通信事業者にも大変動をもたらした。それまで通信事業者は
機器やデータ契約の価格、機器のブランド化といったすべての面を支配していた。しかし、この立場は完全に逆転する。顧客が使用できる携帯電話に基づいて通信会社を選ぶのだ。
2007年11月、グーグルはオープンハンドセットアライアンスを発表し、アンドロイドの提供を始めた。マイクロソフトが有料で行っていた事を、無料で行ったのだ。Windows Mobileにとどめをさしたのは、iPhoneというよりもアンドロイドの登場だった。
iPhoneは2008年以降、スマートフォン市場の大きなシェアを獲得していた。アップルが市場の最もうまみのある部分をさらい、メーカー各社の様々なアンドロイド携帯が残りを奪い合うという構図が固まりつつあった。LGやサムスン、ソニー・エリクソンはアンドロイド携帯を扱うようになった。しかし、自社のOSにこだわったノキアとRIMは苦境に陥った。
著者 チャールズ・アーサー
英ガーディアン紙IT記者 英国『ガーディアン』紙で技術分野を担当するベテラン記者。『インデペンデント』紙、『ニューサイエンティスト』誌にも寄稿している。 通算25年以上にわたって技術および科学分野の報道に携わり、IT業界のあらゆる著名人を取材してきた。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、グーグル幹部へも取材を重ね、アップル、グーグル、マイクロソフトの企業活動を広く報じている。
帯 ジャーナリスト 津田 大介 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第1章 1998年の開戦 | p.13 | 19分 | |
第2章 マイクロソフトと独占禁止法訴訟 | p.37 | 10分 | |
第3章 検索エンジン―グーグル対マイクロソフト | p.49 | 71分 | |
第4章 デジタル音楽:―アップル対マイクロソフト | p.139 | 87分 | |
第5章 スマートフォン戦争 | p.249 | 93分 | |
第6章 タブレットの勝者 | p.367 | 22分 | |
終章 未来の戦場 | p.395 | 7分 |
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