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新産業革命

大量生産には技術と設備と投資が必要になるため、製造業は大企業と熟練工にほぼ独占されてきた。それが変わり始めている。今や、モノはスクリーン上でデザインされ、デジタルファイルとしてオンライン上でシェアされる。これまでの数十年間に工場や工業デザインの会社で行われてきたことが、個人のデスクトップや工房でも行われるようになりつつある。

そして、オープンソースがソフトウェアの世界にもたらしたのと同じ事を、今度は物質的なモノの世界に起こしている。メイカーたちの新たなコミュニティは、電子機器、科学装置、建築物、そして農耕具までも作り出している。

今では、発明や斬新なデザインを思いついたら、製造サービスサイトにファイルをアップロードして、望みの個数だけ製品を作ってもらうこともできるし、3Dプリンタのような高機能の卓上デジタル工作機器を使って、自分で作ることもできる。

世界中にはおよそ1000カ所の「工作スペース」が存在し、驚くべき速さでその数は増えている。ウェブがビットのイノベーションを民主化したように、3Dプリンタやレーザーカッターといった、新しい技術が、アトムのイノベーションを民主化しつつある。

モノのロングテール

20世紀のもの作りモデルの長所の一つは、規模の最大化だ。少量生産と大量生産の価格差はあまりに大きかったため、安価な大量生産品が多様性に打ち勝った。しかし、大量生産の勝利は、小規模な製造業の衰退という代償を伴った。それから半世紀が経った今、2つの変化が起きている。

①デスクトップの工作機械と製造請負サービスが手軽に利用できるようになり、誰でも本格的に製造業を始められるようになった
②ウェブのおかげで、こうした製品をグローバルに販売できるようになった

「一万個単位の市場」とは、オンラインで販売する製品やサービスが成功できる規模のニッチ市場という意味である。充分に商売が成り立つ規模だが、規模が大きすぎないので専門性を維持しながら、激しい競争を回避できる。それは大量生産の手が届かない場所「モノのロングテール」なのだ。

新しい時代とは、大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代である。目の肥えた消費者のために数千個単位で作られるニッチ製品は、集合として工業経済を変える。

製造業の未来

オートメーションのおかげで、製造業に占める人件費の割合はほんの小さなものになっている。そうなると、輸送費や時間といった他の要素がより重要になってくる。つまり、ロボットが製造できる製品なら、人件費の安い場所に移動するメリットが失われていく。欧米とアジアは同じ土俵で戦うようになり、長くて脆いサプライチェーンにかかるコストの増大は、調達の見直しにつながるだろう。