ドラッカーも称賛したリーダーが、リーダーの使命とは何かについて書いている。
■リーダーはどうあるべきか
21世紀のリーダーは「どうやるべきか」を学んだ人ではない。そんな小手先のノウハウなど、今後の恐ろしい変化の浪にたちまち飲み込まれてしまう。今日、明日のリーダーは、「どうあるべきか」に専心する人、すなわち資質、人間性、気構え、価値観、原則、勇気をどのように高めていくかを考え、努力する人である。「どうあるべきか」のリーダーの特徴は次の通り。
・組織の最も大切な財産は人間だと理解し、言葉と行動、人との関係でそれを示す。
・リーダーを同心円のあちらこちらに配し、分散した多様なリーダーシップを築く。
・個人と組織の両方を重んじ、魅力的な組織のビジョンを提示する。
・ミッションのもとに人々を結集させる。
・顧客の声に耳を傾ける。
・メンバーの価値と尊厳を態度で示す。
・組織の成功には健全なコミュニティが必要であることを承知している。
昨今では、従業員が企業への忠誠心を失い、企業も従業員に対する忠誠心を失ったと言われる。やり手達も、「がむしゃらに進め」「死ぬまで踏ん張れ」式の自分たちの哲学が、部下たちの士気とともに消えてしまったことに気づくだろう。必要なのは新しいリーダーである。
■理想の組織に変わるための8つのポイント
ひとつの組織が適切かつ効率的な組織になるまでには、次の8つの段階を経なければならない。
①周囲に目を配る
いろいろな本や記事、調査結果などから、自分達の組織に影響を及ぼしそうなトレンドを見極める。常にこうした姿勢でいれば、転換プランに欠くことのできない情報も得られるようになる。
②ミッションを再確認する
周囲の環境や顧客のニーズは変化するため、ミッションは見直し、必要に応じて改訂する必要がある。ミッションステートメントとは、自分達の存在意義、目的の説明である。リーダーは、マネジメントとは目的ではなく手段であることを理解し、自分勝手なマネジメントのためのマネジメントではなく、ミッションのためのマネジメントを行わなければならない。
③階層を禁じる
組織を転換するためには、メンバーを組織の箱から解放し、柔軟で流動的なマネジメント体制をつくりだす必要がある。スタッフの役割や地位を同心円状に、系統的に配置することで、職務をローテーション化することが可能となる。これによってメンバーは円を描くように移動し、新しいスキルを学び、経験の幅を広げていく。
④「天の声」に疑問をもつ
絶対神聖なタブーなどつくってはならない。どんな方針や慣行、前提に対しても、疑問の声をあげていくべきである。本気で組織を変えようとするなら、「計画的廃棄」も実行すること。
⑤言葉の力を駆使する
リーダーは明瞭で首尾一貫したメッセージを何度も送らなくてはならない。メンバーや顧客の心を明るく照らし出すような強力なメッセージを発しながら、自分の声で組織を導き、よりよいコミュニケーションをとっていくこと。
⑥リーダーシップを分散させる
いかなる組織も、一人のリーダーではなく、多くのリーダーを持たなくてはならない。リーダーを育成し、組織のあらゆるレベルで力を発揮してもらうこと。
⑦「後ろから押す」ではなく、「真正面から導く」
リーダーは何もせず、風見鶏のようにただ待っていたりはしない。組織に影響を及ぼしそうな問題に立場を明言し、企業やその価値観、原則を具現化した存在としてふるまう。
⑧業績を評価する
進歩のためには、自分自身を評価することが不可欠である。転換のプロセスにおける、ミッション、目標、目的は最初に明確にしておく。目標と評価の尺度を設定して初めて、転換への道のりを歩み出すことができる。
ドラッカー財団元CEO 世界で最も著名な女性リーダーの一人。ガールスカウトのボランティアを始めて頭角を現し、ついには全米ガールスカウト連盟初の現場出身CEOに。存続の危機にあった同連盟を劇的に復活させた。 その後、ドラッカー財団の初代プレジデント兼CEOを10年間務め、「米国最高のマネジャー」としてビジネスウィーク誌の表紙を飾ったほか、フォーチュン誌、ニューヨークタイムズ紙などでも稀代のリーダーとして激賞された。1998年には、米国市民にとって最高の栄誉とされる大統領自由勲章を受勲。 近年は、すぐれたリーダーを育てるために、世界中の企業や大学、NPOと積極的に交流している。
帯 経営学者 ピーター・ドラッカー |
帯2 南カリフォルニア大学経営管理学教授 ウォレン・ベニス |
帯3 ハーバード・ビジネススクール教授 ロサベス・モス・カンター |
tokuriki.com 徳力 基彦 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
1章 「どうあるべきか」のリーダーとは? | p.31 | 4分 | |
2章 ヒーローは身近にいる | p.39 | 4分 | |
3章 四つのカゴを持ち歩く | p.47 | 4分 | |
4章 リーダーに、女性も男性もない | p.55 | 4分 | |
5章 礼儀正しさの効用 | p.63 | 4分 | |
6章 リーダーに立ちはだかる二つの壁 | p.71 | 3分 | |
7章 称賛されるリーダー交代の方法 | p.77 | 4分 | |
8章 ピラミッドを円に変える | p.89 | 6分 | |
9章 あなたは「善きサマリア人」か? | p.99 | 4分 | |
10章 理想の組織に変わるための八つのポイント | p.107 | 4分 | |
11章 「家」をきれいに保つ | p.115 | 3分 | |
12章 本気でリーダーを育成する | p.121 | 6分 | |
13章 一〇年後も成長しているためのチェックリスト | p.131 | 4分 | |
14章 官・民・NPOのトライアングル | p.143 | 4分 | |
15章 「共通の言葉」で話せる人に | p.151 | 3分 | |
16章 企業人は非営利組織に注目せよ | p.157 | 4分 | |
17章 多様性の時代の組織づくり | p.165 | 4分 | |
18章 子どもたちを救う、という使命 | p.173 | 4分 | |
19章 実例なら、ここにある | p.181 | 3分 |
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