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2012/10/28更新

財政破綻は回避できるか

123分

5P

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消費税25%でも財政破綻のリスクがある

日本の財務状態は危機的状況にある。このまま、財政再建を行わず放置した場合、どうなるかをシュミレーションしています。

消費税を10%にするぐらいで、揉めている場合ではない。金利が上がれば、巨額の財政負担が発生し、信用不安が財政破綻を招くことになると警鐘を鳴らす。


■負債総額は経済規模の2.3倍
日本の中央・地方の政治が抱える国債などの負債総額は、2011年末で1076兆円と、GDPの2.3倍にも達している。国民1人あたり842万円となる。政府GDP比率を主要国と比較しても、日本の比率は最も高い水準にあり、ギリシャと比べても大幅に高い。

また、日本政府は、税や社会保険料からの収入を大幅に上回る「支出」を行っている。これに伴う財政赤字を国債発行で賄っているため、政府の債務は、非常に速いペースで増え続けている。

日本政府は負債だけでなく金融資産も保有している。政府の負債総額から金融資産保有額を差し引いた「純債務」はGDP比127%とギリシャの153%を下回っているが、他の主要国を相当上回っている。

超短要約

■財務破綻に向かうシナリオ
①選挙民を恐れる政治家が増税を先延ばしして、政府の累積赤字が拡大する。この結果、金利上昇による利払負担が増加するといったリスクが蓄積されていく。

②日本の金融資産の大部分を保有する高齢者層が、政府に対する信頼を徐々になくし、円から不動産や株式、外資、金などに資金を移動し始める。

③長期国債価格が下落し、長期金利が上昇し始める。

④新規発行や借り換え国債の利払負担増加に直面した政府が、発行国債の満期構成を短縮し、主に短期国債で赤字をファイナンスするようになる。国債の満期構成の短期化は、将来の短期金利の上昇によって政府の利払いが急増するリスクを増大させる。

⑤政府の財政悪化に伴い、②の資金シフトが加速する。特に、高齢化に伴う貯蓄率の低下や財政赤字の拡大によって経常収支が赤字化すると、大幅な円安になるリスクが高まる。

円安・株高が発生すれば、景気にとってはプラスとなり、バブル的な景気回復を達成する可能性もある。そうなれば、税収を増大させ、財政赤字を減少させる。この時点で大幅な増税と赤字の削減ができれば、財政破綻は避けられる可能性がある。しかし、政府が増税に躊躇すると次のようなシナリオに突入する。

⑥日本銀行はインフレ率の上昇に対して、金利引き上げによる金融引き締めを行うが、これで政府の利払いが爆発的に増大し、政府の信用が急激に低下する。

⑦政府が日銀の金融政策に介入して、低金利を強制したり、国債の買い取りを強制したりすれば、インフレがさらに加速し、国債価格は暴落する。

⑧金利の急激な上昇で長期国債を大量に保有する銀行が巨額損失を被り、政府に資金援助を要請する。

⑨政府が日銀に国債の低利引き受けを強制する場合、政府は、利払増加による政府債務の急増を避けることができる。この場合は、敗戦直後のインフレ期と同様に、政府債務を大幅に引き下げることが可能で、政府は財政バランスの回復に成功する。しかし、所得分配の上では、国債や生命保険、個人年金などの金融資産を保有する人々が、その実質価値の喪失で巨額の損失を被る。

この場合、政府は財政を健全化できるが、金融資産の実質価値の低下により、生活資金に困る多数の人々を生み出すことになる。

著者 深尾 光洋

1951年生まれ。慶應義塾大学商学部教授 経済産業研究所ファカルティフェロー 大学卒業後、日本銀行入行。日本銀行から米国ミシガン大学に留学し1981年に経済学博士を取得。その後、経済企画庁 調査局、OECD(経済協力開発機構) 金融財政政策課エコノミスト、日本銀行調査統計局参事などを経て、1997年から慶應義塾大学商学部教授に就任。2005年から2010年まで日本経済研究センター理事長を兼任。

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法政大学大学院教授 小峰 隆夫

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.3 3分
第1章 財政破綻は回避できるか p.13 30分
第2章 欧州財政危機の教訓 p.57 27分
第3章 財政再建と経済成長を両立できるか p.97 17分
補論 ゼロ金利下における金融政策の有効性 p.123 12分

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