人間の本能がゲームの原点
どういう発想でものが売れるかを考えるには、人間の本能を知らなければダメ。その本能とは「セックス」である。ゲームとは競い合いであり、そのルーツは殺し合い。その一つ奥の原点というのは、雌をめぐる雄同士の戦い合いである。勝つことで多くの雌に自分の子孫を生ませる。地球上の動物ほとんどがそうなのだから。そういう感覚でものを見なければ、何が売れるか売れないか、わからない。
古いものを今の技術で可能にする
どうしたら発想は出てくるかと、良く聞かれるが、その度「もう一回子供から始めて、いろんなものに興味を持ちなさい」とアドバイスする。私の発想とは、古いものを今の技術で可能にすること。ものによっては、その頃まともにやってたら到底値段が合わないものが、技術革新で安くなって、今だから可能だというものがある。
アイデアとは、子供の頃思ってた「不可能」なことを、いま雑誌などを見て、新しい技術のきっかけというか、ぱっと引っかかるものがある。
枯れた技術の水平思考
技術というのは最先端を使うべきでない。儲かる商品づくりには最先端はかえってマイナスになる。散々使いこなされて、枯れてきた技術を、水平思考、つまりまるっきり違う目的に使うことによって、ヒット商品というものは生まれ出る。
電卓をそのまま垂直思考したのでは、電卓のままだが、そこまでこなれた枯れた電卓技術を水平思考して、ゲームというものに置き換えたからこそ『ゲーム&ウォッチ』がヒットした。『ゲームボーイ』も同じことが言える。液晶技術が枯れてきた。値段が非常に安くなり、『ゲームボーイ』が1万円を切る値段で発売できた。それがヒットにつながった。
世界にない商品をつくる
開発哲学は、とにかく世界にはないものをつくるということ。世界にない商品をつくれば、それによって新しい独占市場を手にすることができる。似たような商品をつくれば競合して、シェア争いになる。そんなシェア争いをするなら、新しいシェアをつくった方が手っ取り早い。
ただし、世界にない商品をつくるということは、世界の最先端をゆく、世界にはまだない技術を使おうということではない。「最先端」にこだわり、「不要」なものを沢山つけて「高価」な玩具をつくるとしたら、それこそ大企業病である。娯楽の世界では高い商品は誰も買ってくれない。
今、常識のようになっている「十字キー」と呼ばれるコントローラーがある。当時のコントローラーはジョイスティックというもので、大変コストがかかるものだった。どうしたら安くなるかという思いで作った。