「ドラッカーの再来」と賞される経営思想家が、爆発的ヒットを生み出すための6つの法則を紹介。キンドル、ネットフリックス、ジップカー、プリウスなどの事例をもとに解説されている。
■ディマンド側から考えよ
ディマンド(需要)は、経済から市場、組織など、あらゆる大小様々な車輪を動かしている。ディマンドは「創造」できるのか?
ディマンド・クリエーターは、人々を理解することにすべての時間を注ぎ込む。彼らは、人々がいかに期待し、おもしろがり、衝撃を受け、熱望し、飽き飽きし、違和感を感じ、怒り、不信感を抱き、熱狂し、イライラし、予測不能であるかを敏感に感じ取る。人々がそれぞれの生活の中で実際にどのように行動しているかを観察し、常に対話し、大小様々なハッスル(煩わしさ)を解決する方法を見出す。
たくさんのものを買い込もうと、本当に欲しいものと妥協して受け入れる商品やサービスの間には、まだ大きなギャップが存在する。このギャップこそが新たなディマンドを創造する機会を提供してくれる。ディマンド・クリエーターたちは、このギャップに気づく。そして、そのギャップをきっかけに、ディマンド側から物事を考える。現実を捉え直し、組み立て直す。その結果、人々がどうしても欲しくなる製品が誕生する。この再考プロセスには、6つのステップがある。
■爆発的ヒットを生む6つの法則
①マグネティック
機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す。マグネティックとは「優れた機能性」×「優れた感情的訴求力」である。
普通のMP3を持っている人が「いいよ」と言うのに対して、iPodを持っている人は10人中10人が「気に入ってる!」と言うのはこのためだ。
②ハッスル・マップ
時間とお金をムダにする「欠点」を明らかにする。マグネティックな製品は、ハッスル・マップを作成し、顧客の暮らしの中の軋轢を指摘し、それを軽減、排除する方法を見出した誰かの手で創り出される。
レンタル・ビデオの延滞金に悩まされ、なんとかしたいと決意した男が、オンラインDVDレンタルのネットフリックスを作り上げた。
③バックストーリー
「見えない要素」で魅力を強化する。アマゾンのキンドルの成功は、Eインクの鮮明で読みやすいディスプレイ技術に負うところが大きい。では、同じEインク技術を使って、キンドルの3年前に始めたが、失敗したソニーのリブリエはなぜダメだったのか。キンドルの利点は、直接書籍のダウンロードができたことだった。外見からは見えない、ワイヤレス接続、アマゾンと出版社の関係、個人向け「お勧め本」といった特色こそが、キンドルにマグネティックな魅力を与えている。
④トリガー
人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう。素晴らしい新製品を耳にしてから実際に購買行動に出るまでは時間がかかる。様子見客を顧客に変えるトリガーは、演繹的な方法や他のビジネスの実例からは導き出せない。実際に試してみた時に、何が起きるかを見極めるのだ。
ネットフリックスのトリガーは「配送速度」、キンドルのトリガーは「書籍への瞬間的なアクセス」だった。
⑤トラジェクトリー
魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす。常に変化し続ける顧客の上がり続ける期待に応え、さらにはその期待を超えるためにひたすら改善し続ける必要がある。ディマンド創出に「一回限り」はありえない。
⑥バリエーション
「コスト効率の高い製品多様化」を図る。ディマンド創出の際に直面する最も巧妙で困難な課題の一つが「平均的な顧客」という神話だ。ある種の典型的な顧客を惹き付けるために提供する製品を作ってもムダだ。過剰、不足、完全な過ちをもたらすからだ。個々の顧客の違いと、その違いにどう応えるかを考えなければならない。
1951年生まれ。オリバー・ワイマン パートナー さまざまな大企業のCEOレベルに行なった成長戦略および新ビジネスデザイン構築に関するコンサルティングで名声を博し、ダボス会議をはじめ、マイクロソフトCEOサミット、フォーブズCEOフォーラム等でもキーノート・スピーカーを務める。 1999年には『インダストリー・ウィーク』誌において、ドラッカー、ポーター、ゲイツ、ウェルチ、グローブとともに「経営に関する世界の六賢人」に選ばれた。
著者 カール・ウェバービジネス作家 スライウォツキー氏のほかに、ムハマンド・ユヌス氏など数多くの著書執筆で協力している。
日本経済新聞 |
TOPPOINT |
帯 早稲田大学ビジネススクール教授 内田 和成 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 9/1号 [雑誌] 丸善丸の内本店「松丸本舗」売場長 宮野 源太郎 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 需要のミステリー | p.3 | 13分 | |
1 マグネティック―機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す | p.21 | 40分 | |
2 ハッスル・マップ―時間とお金をムダにする「欠点」を明らかにする | p.71 | 35分 | |
3 バックストーリー―「見えない要素」で魅力を強化する | p.115 | 39分 | |
4 トリガー―人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう | p.164 | 40分 | |
5 トラジェクトリー―魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす | p.214 | 32分 | |
6 バリエーション―「コスト効率の高い製品多様化」を図る | p.255 | 37分 | |
7 ローンチ―需要のアキレス腱に注意する | p.302 | 24分 | |
8 ポートフォリオ―シリーズ化には高いハードルがつきまとう | p.332 | 26分 | |
9 スパーク―需要の未来はこうして見つけよ! | p.365 | 24分 | |
結論 | p.395 | 2分 |
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