精神科医である著者が、「テンパらない」方法を伝授。テンパった時の応急処置から、テンパらないための生活習慣、心の持ち方がわかりやすく紹介されている。
普段、仕事などに追われて、心に余裕をなくしている人向け。
■テンパり続けるとパフォーマンスが下がる
「テンパる」とは簡単に言うと「目一杯の状態になる」ということ。「テンパって」くれば、仕事は雑になってしまい、締め切りも危なくなってくる。集中力も落ちてしまい、効率化からほど遠くなる。
「テンパる」メカニズムは、周りのプレッシャーとスピードに、脳も心も身体も疲れてしまい、消耗してしまうこと。適度なストレスは、克服していく作業により、人間的な成長、発展を促す。一方、過度のプレッシャー、合わない人間関係、睡眠不足などのストレスで追い込まれすぎてしまうと、脳が疲れて余裕を失い、本来の能力や人間らしさまで奪われてしまう。
脳と心が余裕を失うとは、思考力や注意力、感情コントロール能力の低下を意味する。「何をしでかすかわからない」衝動性も高まってくる。イライラ、怒りっぽい、不機嫌といったネガティブな感情も強くなる。
「テンパらない技術」を知っておけば、全く「テンパらない」聖人君子になるのはムリかもしれないが、「あまりテンパらない人」にはなれる。
■「テンパらない人格」をじっくり育てる法
①手本にする「メンター」を持つ
リスペクトできるリアルな人物を「メンター(師)」として持っておく。公私にわたって頼れる、ちょっと「甘えられる」先輩がいれば、たとえ職場が別になったとしても、時には会って旧交を温めておく。
②「新しい経験」を恐れない
見知らぬことに手をつける、知らない人との交わりに顔を出すなどといった行動は、不安と緊張を伴う。しかし、不安や緊張が強いほど、克服した時の喜びや達成感は格別なものがある。実際に「テンパる」経験が、脳に記憶モデルとして刻み込まれ、次の似たような場面の時に「テンパらない」ようにフィードバックがかかる。
③「想定外」を引き受ける
「テンパらず」に乗り切るには、「想定外」を引き受ける度量の広さが、求められる。予想外のことが起こった危機的状況の時こそ、人間性を問われるタイミングである。
④まじめな「愛されキャラ」を目指す
周囲からの温かいまなざしを得るには「愛されキャラ」になるように努力すること。第一に愛想を良くする。さらに自分の失敗談を楽しく話すことができれば「愛されキャラ」に大きく近づける。自慢話や説教はNG。そして重要なことは「まじめ」であること。
⑤「悪い完全主義」を捨てる
完全主義には「テンパってしまう」落とし穴も隠れている。完全主義がオーバーになると、自分をどんどん追い込んでいくことになる。失敗を怖れず、「不完全を認める」スタンスが、不健康な完全主義から脱するポイント。
⑥倫理観を一段だけ下げ、「プチいい加減」になる
他人を受け入れる事のできない余裕のなさが、「テンパり」に拍車をかける。あまりに倫理観が強すぎると、怒りのエネルギーが大きくなってしまう。ちょっとだけ「いい加減」になることで、包容力、寛容性が身に付けば、人気者になれる可能性がある。
⑦「ゼロリスクなどありえない」ことを頭に入れておく
「100%安全じゃないと嫌だ」と頑なに考えていては、リスクに直面した時に「テンパる」のは確実である。
⑧子供やお年寄りと触れ合う時間を作る
子供に接することは、「いいテンパり」の基礎練習になりえる。
⑨「仮説」を立てる力を養う
「テンパらない」コツの一つとして、「思い込み」ではなく、「仮説」という思考のスタイルを取り入れることがオススメ。仮説はあくまで、間違っている可能性もあり、考え直すことができる。硬直化した考えに予想外のことが起こると「テンパって」しまいやすくなる。
⑩他人の「冷静なアタマ」で考えてみる
自分とは別の、架空の冷静沈着な人を想像して、彼ならばどう振る舞うかを、イメージする。
著者 西多 昌規
1970年生まれ。精神科医 自治医科大学精神医学教室・講師 国立精神神経センター病院、茨城県立友部病院で精神科臨床に従事したのち、2005〜2007年までハーバード・メディカル・スクールの研究員として、睡眠と記憶、情動、脳機能について研究。 2008年より東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野助教。2011年より現職。 専門は、うつ病など気分障害を中心とした臨床精神医学、睡眠医学、脳波を用いた精神生理学 日本精神神経学会専門医、睡眠医療認定医など、資格多数。スリープクリニック銀座でも診療を行うほか、企業の精神科産業医として、メンタルヘルスの問題にも取り組んでいる。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.3 | 2分 | |
第1章 テンパると「人生を台無し」にしてしまう!―その「危険性」と「ダメージ」 | p.15 | 16分 | |
第2章 なぜ人は「テンパってしまう」のか?―その「科学的メカニズム」 | p.49 | 16分 | |
第3章 テンパってしまったときの「応急処置」 | p.83 | 15分 | |
第4章 テンパらないための「生活習慣」 | p.115 | 16分 | |
第5章 「テンパらない人格」をじっくり育てる法 | p.149 | 16分 | |
第6章 周囲をテンパらせない「コミュニケーション術」 | p.183 | 11分 | |
第7章 テンパっても成長できる「ポジティブ反省法」 | p.207 | 13分 |
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