空洞化のウソ
空洞化とは、「一国の生産拠点が海外へ移転することによって、国内の雇用が減少したり、国内産業の技術水準が停滞し、さらには低下する現象」であるとされている。しかし、日本企業の海外進出、特に「現地化」によって国内産業が「空洞化」してきた、という学理的根拠、実証結果はない。
①資金の空洞化のウソ
日本企業が海外に出ていってしまうと、稼いだお金は海外で使ってしまい、日本国内に戻ってこないとの危惧がある。しかし、実際には海外で稼いだお金は、日本国内に戻ってきている。それどころか、日本企業や日本人が海外で稼いだお金が、日本が貿易で稼いだお金より大きくなり、日本の対外取引の生命線になりつつある。
日本企業の対外直接投資残高は、2001年からの10年間で2.8倍に増加。この投資から得られた配当や利子による所得収支は、2012年1月時点、1兆1326億円の黒字。一方、貿易収支は1兆3816億円の赤字。2005年以降、日本は「貿易立国」でなく「投資立国」へと変貌している。
②技術の空洞化のウソ
海外展開し「現地化」している日本企業の方が、国内に留まる日本企業より生産性が高い。規模の経済効果が働く上、国内では生産性の高い分野に経営資源を集中することができるという効果もある。さらに海外の情報や知識を獲得することにより、新しいイノベーションのチャンスを得ることができる。
③雇用の空洞化のウソ
これまでの多くの実証研究では、海外進出することで、むしろ雇用が拡大するという事実が明らかになっている。海外に進出すると、まず国内における海外ビジネスを検討する企画立案・新規開発部門が拡大する。さらに、事業展開が進めば、これを担当する国内のバックオフィス機能が拡大する。
また、最終製品の海外生産による「現地化」は、一部には日本国内でしか生産し調達できない部品など中間財の日本からの輸出を促進する。これらの中間財を作るための雇用が拡大する。
現地化せよ
日本国内の内需が縮小していく中、今までの国内目線の戦い方では限界に来ている。日本国内に閉じこもっていれば、生産性の低い分野では、早晩国際競争力が削がれてしまう。競争力のある日本の企業は、無条件に「新興アジア」の市場を狙う時である。
日本の技術やノウハウをそのまま売り込むという競争を避け、「新興アジア」との協業により「現地化」を進め、その地域で何が売れるかを見極めて作り、提供する。そのためには、日本企業のコア・コンピタンスを押さえながら、「新興アジア」の製品に入れて売る、というビジネスモデルが必要である。