2012年7月に上場を果たしたエニグモの起業物語。
成功した企業の原点がわかる1冊。
■アイディアの原点
須田と田中は、博報堂に勤務していた。2002年のクリスマスの夜、田中が「すごいことを思いついた」と須田の肩を、ぽんと叩いた瞬間から始まった。
「アメリカで暮らしていた時に普段使っていた日用品を、日本で買おうとしても、なかなか手に入らないことが多いんだ。海外の商品がたくさん輸入されて日本でも買える時代になったけれど、それでもまだまだ買えないものの方が圧倒的に多い。自分のMBA時代の同級生で、わざわざ向こうにいる友人に頼んでまで洋服とか個人で輸入している人もいる。きっと他にもそういう人が、たくさんいると思うんだよね。
それで閃いたんだが、インターネットを使って、海外にいる人を通じて個人輸入を気軽に頼める仕組みが作れれば、すごい潜在ニーズがあるに違いないと思うんだ。」
須田は田中が話し終えると「すげえ面白いな」と真剣な顔でつぶやいた。その後、「ただ海外で売っている商品が買えるだけじゃなくて、『こんな物を買いたい』というリクエストができた方がいいんじゃないか?」「出品は、店頭の商品を撮影して、ネットにアップすればいい。」思いつくままアイディアを出し合った。
「とにかく面白そうだからやってみようぜ」、ほとんど、のりで始まった事業だった。
■起業前夜
週に何度も集まっては、アイディアを練っていった。この仕組みを「バイイング・マーケット」を意味する「バイマ」と名付けた。
次にシステム設計ができる会社と、資金面などを協力してもらうビジネスパートナーを探し始めた。事業計画書を作り込み、協力してくれそうな会社を探しては、企画書を持ってプレゼンして回った。
バイマのビジネスモデルに二人で惚れ込んでいたので、「それがどんな形であってもいいから、世の中に出したい」という気持ちだけだった。「自分たちが考えたアイディアで世の中を変えたい」と思っていた。
プレゼンを繰り返す中で、ある会社の社長と知り合った。お金も3000万円出そうと言ってくれた。その社長から、当時まだエッジという名前だったが、ライブドアの堀江貴文氏を紹介された。堀江さんは、プレゼンも聞かず企画書をパラパラめくり、ある一枚に目をとめて15秒ほど考え込むと「これ面白いですよ。やりましょう。で、どうやりましょう?」と言った。
そこから、事態は風雲急を告げる。堀江さんの反応が予想以上に良かったため、その会社の社長は2人を外して、エッジと自分の会社だけで事業を進めようとし、揉めることになった。結局、エッジとは直接やりとりし提携話を進めたが、お互いの方向のずれを感じ、自分たちでやるしかないということになった。
■エニグモ誕生
バイマのアイディアを話し合ってから1年、信頼できる2人を役員に迎え、それぞれ100万円ずつ出し合い、会社を設立した。バイマの規模の立ち上げには、少なくとも2000万円以上の金がかかりそうだった。そこで、役員各自が、本当に信頼できる友人や知人、親戚などに出資を募り、最終的に個人的なつながりのみで、6000万円の金が集まった。
会社設立当時、4人共まだ会社に籍は残っていた。須田も田中も当時30歳で、900万円の年収があった。辞めればゼロになる。だが不安はなかった。
バイマを発注するシステム会社を決め、半年後に立ち上がるイメージで走り出した。しかし、また暗雲が押し寄せる。システム会社は上場会社だと安心していたが、丸々下請けに出しており、その下請け会社が夜逃げしてしまった。半年間の期間と、開発やプロモーションに使ったお金を取り返せないのかと思うと、絶望的な気分になった。信頼して出資してくれたお金を失ったことで、申し訳ない気持ちで一杯になった。
結果的に、システム発注額以上の金額は取り戻せたが、半年を無駄にした。次は実績のある会社にシステムを発注し、オープンにこぎ着けた。社員総出で、出品できる商品を探しまわった。海外会員のネットワーク構築には、日本人向けフリーペーパーへの広告出稿や、海外在住の方のホームページをネットで検索して、直接連絡するという地道な活動も行った。
著者 須田 将啓
1974年生まれ。エニグモ代表取締役共同最高経営責任者 2000年博報堂入社。マーケティングプランナーとして、大手企業からベンチャー企業まで幅広い領域のマーケティング戦略、ブランド戦略、コミュニケーション戦略の立案を行う。 2004年博報堂退社、同年に株式会社エニグモを設立。
著者 田中 禎人1974年生まれ。エニグモ代表取締役共同最高経営責任者 大学卒業後、オンワード樫山入社。その後、外資系PR会社のIPRシャンドウィック(現ウェーバー・シャンドウィック)を経て、カリフォルニア大学経営大学院で経営学修士(MBA)を取得。 2001年博報堂入社。ストラテジックプランナーとして、大手企業のマーケティング戦略、広告戦略、商品開発を担当。同僚の須田氏とともに博報堂を退社し、株式会社エニグモを設立。
帯 クオンタムリープ 代表取締役 出井 伸之 |
帯2 ジャーナリスト 佐々木 俊尚 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ | p.4 | 1分 | |
第1章 起業前夜 | p.7 | 27分 | |
第2章 エニグモ誕生! | p.47 | 26分 | |
第3章 世界初第一弾 バイマ、オープン | p.85 | 20分 | |
第4章 失意からの挑戦 | p.115 | 19分 | |
第5章 世界初第二弾 プレスブログ | p.143 | 19分 | |
第6章 世界初第三弾 フィルモ | p.171 | 23分 | |
第7章 世界へ | p.205 | 16分 | |
エピローグ | p.229 | 7分 |