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2012/09/30更新

人間の基本 (新潮新書)

130分

4P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

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自分の頭で考えよ

知識と体験は全く別物なのであって、体験に知識が供給される時に初めて、思想としての命が吹き込まれる。その片方が欠けてしまったら役に立たない。

携帯電話やパソコンを何時間操作したところで、そこからはっきりした目的のあるプロダクティビティ(生産性)はほとんど生まれない。物知りにはなるが、知識というものは方向性を持たせて集約しないと、あまり役に立たない。

人間から能動態がなくなり、あらゆることが受動態になりつつある。テレビでチャンネルを選ぶ、ネットで情報を集めることも、基本的に非常にパッシブな受け身の文化に過ぎない。そんな生活に浸っていると、やがて人生の持ち時間が減ってしまう。

もともと情報というものは一定のところで歩止まりがあって、そこから思考していくのが人間のすること。悪にせよ、善にせよ、想像力を働かせるのが人間としての基本的な作業である。一つの事柄から想像して発想することが、その人なりの持ち味や個性であるはずなのに、そのイマジネーションが根こそぎ奪われる時代になっている。

どんな状況でも自分の頭で考え、想像し、工夫して生きることが人間の基本である。

混沌こそが人生である

善か悪か、白か黒かでしか物事を考えられないのは幼稚さの表れである。多くの人間は凡庸で、神ではないので、完全な善人も悪人もいない。

そもそも混沌のない理詰めの世の中など、蒸留水みたいなもので魚も飼えない。信仰も堕落も理性も感情も、あらゆることが混沌とした人間社会の大きな渦の中で、自分にとって何が大事なのかをつかまえることで、れっきとした人間が作られる。つまり、混沌こそが人生である。

誰もが善人でいい人を装っていては、どんどん世の中が平板になっていく。人間というものは善悪両面で成り立っていて、善の要素がないのが悪魔、悪の要素がないのが神だとすれば、どちらも人間の手に負えるものではない。善悪の間にこそ人間の性質がある。

日本人はもう少し「よくわからない人間」がいてもいいし、「人間はわからないものだ」と思うべきである。

人間の基本に立ち返れ

この先どれほどIT技術が進歩して、ボタン操作一つで素早く「答え」が見つかろうと、そこには体験と呼ぶに値するものなど何もない。限られた人生の時間を無駄にし続ける、硬直した、精神の貧困な人間をつくるだけである。

常時ばかりではなく、非常時にも対応できる人間であるために、その基本となるのは一人ひとりの人生体験しかない。強烈で濃厚で濃密な体験、それを支える道徳という名の人間性の基本、それらがその人間を作り上げる。