陸上のレアアース
レアアースは、軽レアアースと重レアアースに分けられる。それぞれ次の問題がある。
①軽レアアース
レアアースを製錬する過程では、同時に放射性元素のトリウムとウランも濃縮してしまう。ウランは原子力発電用の資源として転用できるが、トリウムは全く使い道がない。軽レアアースの鉱床は、世界中に分布しているが、環境問題を意に介さない中国以外の国では、このトリウムの処理がネックとなり、開発が困難。
②重レアアース
レアアースの鉱山は世界中に分布しているが、ほとんどが軽レアアースの鉱床。重レアアースの鉱床は現在、中国南部の江西省にしかない。類似の気象条件と地質を持つベトナムやカンボジアなどでも、今のところ有望な鉱床は見つかっていない。
中国の資源戦略
中国には世界の埋蔵量の5割を占めるレアアース資源が存在する。その潤沢な資源を背景に、安値攻勢に踏み切り、中国以外の鉱床のほとんどが閉山に追い込まれた。2000年代以降には、世界のレアアース資源の90%以上を中国が生産・供給する状況が作り上げられた。
中国は他の鉱山を閉山に追い込んだ後に、輸出を減らし、輸出税を課税。輸出価格を吊り上げる一方、中国国内では輸出価格の半値以下で流通させている。結果、価格高騰と供給不足にあえぐ日本企業は、中国での生産にシフトせざるを得ない状況に追い込まれている。ハイテク製品の生産拠点が中国に移転することにより、国内の雇用が喪失するだけでなく、独自のハイテク技術が中国側に流出する危険性が懸念されている。日本はレアアース資源の一部を中国以外から調達する必要がある。
レアアース泥の特長
レアアース泥は、タヒチの東側の南東太平洋とハワイを中心とした中央太平洋の海底に広く分布する。レアアース泥は、次の長所を持っている。
①陸上の1000倍の埋蔵量を持つ
②重レアアースの含有量が高い
③トリウム、ウランなどの放射性元素を含まない
④安定した海域に広く堆積しており、資源探査が容易である
⑤レアアースの抽出が極めて容易である
レアアース泥は開発できるのか?
レアアース泥は、南鳥島の近海に存在する。資源開発には3つの壁があるが、いずれも克服できる。
①深い海底から泥を引き揚げることが可能か
長いパイプを用いて海底の資源を海水とともに海上へ吸い上げる。現在の最新技術をもってすれば、水深4000mからでも十分可能。
②海洋環境に深刻な影響を与えないか
もともと海底で堆積している泥そのものなので、何も害がない。
③経済的に採算が取れるのか
試算上、1艘の船で年間700億円の収入が見込める。20年間の開発、割引率10%と仮定した場合、レアアース泥の正味現在価値は112億円、IRRは11.8%となり、黒字になる。