塩漬け預金を社会に還元する方法
年金は、若い世代の人たちが払ったお金で、上の世代を支える仕組みになっている。だが、日本の場合、上の世代が資産を貯め込み、若い世代はカツカツだという現実がある。お金のない世代の稼ぎで、お金のある世代が養われている。
上の世代が消費活動でお金を使ってくれれば、その資産が若い世代に移転するはずだが、現実には高齢者の資産はほとんど塩漬けになっている。実際、日本の個人金融資産1500兆円の約2/3は60歳以上が保有する。本来、これらの金融資産は取り崩されて生活費に回るはずだが、上の世代は年金だけで生活できるため、そうなっていない。
公的年金制度は、世代間賦課方式でやっている限り間違いなく崩壊する。そうさせないためには、必要な人だけに給付する形にすれば良い。要するに「掛け捨て保険」の形にする。一定年齢に達した人が申請すれば原則支給されるが、一定以上の所得やストックのある人に対しては、非給付または減額される仕組みにする。
このように変われば、上の世代は自らのストックに手をつけざるを得ない。その結果、塩漬け状態の預貯金が社会に還元される。今まで払い込んできた保険料は、金利分を上乗せして、全員に返し、現行制度はいったん解散する。その上で、新しい最低保障のための「掛け捨て保険」型年金を始めればよい。
税制改革では世代間格差は解消しない
個人金融資産の2/3を握る高齢者の富を、若い世代に再分配する方法を考えねばならない。所得税の累進課税を強化する話があるが、高齢者は資産はあっても所得がない人も多く、あまり意味がない。相続税の強化や、贈与税の引き下げにより、生前贈与を促す方法もあるが、これは一定以上の資産を持つ人にしか効かない。
つまり、日本では税制自体による所得再分配効果は大きくない。そのため、高齢者向け社会保障体系の改革により、集めた税金の再分配の給付先を、上の世代から若年層や子供たち向けに転換することが必須である。
革命を起こせ!
放っておくと、今の30代以下は搾取され続ける。この搾取構造は、政官財労のいろいろなレベルで、社会システムとしてビルトインされている。上の世代が、暗黙のうちに1つの階級として、共通の価値、利益を有してしまっている。
これを覆すのは「革命」である。革命が起きるには旧制度の疲弊から生まれる害悪が身の回りに頻発し、それが社会全体で認知される必要がある。その意味で、今の日本の社会状況は大きな変革が実現するには、十分に悪くなっていない。
革命の好機は、もう戻れなくなる没落ポイントの直前の一瞬に訪れる。財政状況の悪化、経済競争力の低下、団塊世代の定年退職などを考えると、これから5年後くらいに1つの大きな分水嶺がやってくる可能性が高い。