団塊世代などのお金を持つ高齢者が、所得も資産も持っていない30代以下の若い世代に、年金や社会保険の負担を押しつけ、お金を巻き上げている。世代間の搾取の構造を示し、その解決策を提示している。
■上の世代は既得権を手放せ!
現在の公的な年金制度や医療保険のコストの大半は、若い世代の保険料か税金で賄う仕組みになっている。若い人たち2、3人で、老人1人を支えていくことになる。これでは、若者の大半が年寄りの手伝いでエネルギーを使い果たしてしまう。この状態を変えるためには、制度を根本から改めるしかない。
1人1票の民主主義的政治の世界では、若い世代より絶対数が圧倒的に多い、上の世代の意見が勝つ。政権は、多数派である上の世代を切り捨てることはできない。今の仕組みを変えるには、上の世代が自らの意思で自分たちの既得権を手放してもらうしかない。
日本の個人金融資産1500兆円の大半を60代以上の人が持っている。私たちの国では、資産も所得もない若い世代から巻き上げて、資産も所得もある上の世代に配っている。また、企業レベルでも終身年功制、企業年金という仕組みの下、同じような収奪構造が温存されている。
税と社会保障の問題、財政悪化の問題、若年層の失業問題、格差問題、これらの問題の根底には、世代間の収奪構造の問題がある。
日本の人口は逆ピラミッド型の構造にあり、既得権益を持つ上の世代が多数派である。そのため、世代間収奪の構造は民主的プロセスで転換することは難しい。
この問題を解決する主役となるのが、絶対負け組になるとわかっている世代の先頭を走っている30代の人々である。彼らが世代的・階級的な自覚を持って立ち上がった時、日本は大きな変革に向かって動き出す気がする。
著者 冨山 和彦
1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役社長を経て、2003年、産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、IGPIを設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わった経験を持つ。 オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、朝日新聞社社外監査役なども務める。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 若い世代の活力を甦らせるために | p.19 | 31分 | |
第2章 塩漬け預金を社会に還元する方法 | p.71 | 35分 | |
第3章 日本人に合った税体系と働き方 | p.129 | 26分 | |
第4章 グローバル時代の人材育成 | p.173 | 28分 | |
第5章 日本の強みを生かした成長戦略 | p.219 | 29分 | |
第6章 リアル革命のススメ | p.267 | 26分 | |
おわりに | p.311 | 4分 |
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