ウォートン・ビジネススクールで教鞭をとる交渉術の専門家が、その人気講義をまとめた本。買い物での値下げ交渉、就職面接、子供のしつけなど、生活のあらゆる場面で使える実用的な内容になっている。書籍代以上の利益が返ってきそうな1冊。
■交渉の半分は「人」で決まる
交渉で何より大切なことは、向かいに座っている人たちの個性や感情が、交渉のすべてを支配するということである。
人が合意に至る理由の内、内容と関係のあるものは10%に満たないことが、研究からわかっている。50%以上が、人と関係のある理由である。お互いを気に入っているか、信頼し合っているか。そして、1/3強が交渉で用いられるプロセスと関係がある。お互いのニーズを知ろうとしているか、お互い真摯な姿勢で取り組んでいるか。
交渉では実質的な問題がすべてだと思っている人は、正論をふりかざすだけで、相手を説得することはまずできない。
敵対的な態度で交渉する人が取引をまとめる確率は、協力的に問題解決を図ろうとする人の半分だという。そしてまとめた取引での取り分も、協力的な人たちの取り分の約半分でしかない。つまり、対立的な態度で交渉しても得られる利益は1/4にしかならない。
交渉で何より大切にすべきは、相手の心理である。相手の心理について考え抜かなければ、機会を発見したり、対立を解消したりすることはおぼつかない。
■12の戦略
①目標がいちばん大切だ
交渉は目標を達成するために行うが、多くの人が他のことに気を取られ、目標に反する行動をとっている。交渉では、どんなに効果があろうと、関係構築や利益、ウィン・ウィンを追求することそれ自体を目標にしてはならない。あくまで目標に見えて近づけるものでなくてはならない。
②相手がすべて
相手が物事をどのようにとらえ、感じているか、何を求めているか、どのような形で確約を行うのかを知ること。相手の立場に身を置き、相手を自分の立場に立たせよう。実力や影響力を行使しても、報復を招くだけである。
③「感情のお見舞い」をする
理不尽な人は感情的になっている。聞く耳を持たない人は、説得しようがない。相手に共感を示し、必要とあれば謝罪し、相手を尊重し、相手の感情的心理を汲み取らなくてはならない。
④状況は毎回異なる
交渉をするたびごとに、状況を分析する必要がある。
⑤段階的に進める
交渉が失敗する原因に多いのは、一度に多くを求めすぎること。これでは相手を不安にさせ、交渉がリスキーだという印象を与え、違いを拡大してしまう。相手がよく知っていることから、よく知らないことへ、一歩ずつ導こう。
⑥不平等な価値のものを交換する
何を大切に思うかは、人によって違う。一方にとっては大事だが、他方にとっては大事でないものを探し、交換する。
⑦相手の規範を調べる
相手の方針や例外規定、前例、過去の発言を調べよう。相手が方針に反することをしたら、問題行動を指摘しよう。
⑧相手を操作せず、率直で建設的な態度をとる
信頼は最大の財産である。
⑨コミュニケーションを絶やさず、目に映るままを言葉にし、ビジョンを描き出す
今の状況を簡潔に言葉で表し、相手が向かうべき場所を描き出そう。
⑩本当の問題をつきとめ、それをチャンスに変える
本当の問題を見つけるには、相手がなぜ今のような態度をとっているのか、その原因をつきとめる必要がある。相手の立場に身を置いて考えよう。
⑪違いをありのままに受け止める
違いは、多様な認識、アイデア、選択肢を生み、よりよい交渉をもたらす。
⑫準備する
交渉の前に交渉戦略やツールのリストを作成し、それを使って練習する
ペンシルベニア大学ウォートン・ビジネススクール 教授 交渉術の世界的専門家。グーグル、マイクロソフト、JPモルガンなどの多くの優良大企業や、国連、世界銀行などの公的機関に、交渉戦略に基づいてアドバイスしている。ハーバード大、コロンビア大、UCバークレーなどでも講師を務め、現在受け持っているペンシルベニア大学ウォートン・ビジネススクールのMBAコースでの講義は同校で15年連続人気ナンバーワンとなっている。 自らも弁護士の立場、企業家の立場から、農業からハイテクまで幅広いビジネスを率いている 。
帯 デル・コンピュータ 取締役 ロブ・マッキントッシュ |
帯2 サムスン電子 取締役 ナナ・ムルガサン |
帯3 NFL CFO アンソニー・ノート |
帯4 ジョンソン&ジョンソン ロブ・アロメア |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.8 | 3分 | |
第1章 これまでとはまったく違う交渉術 | p.11 | 35分 | |
第2章 交渉の半分は「人」で決まる | p.52 | 28分 | |
第3章 相手の頭のなかをのぞく | p.85 | 31分 | |
第4章 非協力的な相手と交渉する | p.121 | 35分 | |
第5章 不等価交換 | p.162 | 22分 | |
第6章 感情は交渉の敵 | p.188 | 28分 | |
第7章 問題解決のためのゲットモア・モデル | p.221 | 20分 | |
第8章 文化の違いに対処する | p.244 | 33分 | |
第9章 職場でゲットモア | p.283 | 24分 | |
第10章 買い物でゲットモア | p.311 | 25分 | |
第11章 人間関係 | p.340 | 37分 | |
第12章 子どもと交渉する | p.383 | 27分 | |
第13章 旅行先でゲットモア | p.415 | 27分 | |
第14章 街中でゲットモア | p.447 | 21分 | |
第15章 社会問題 | p.471 | 32分 |