スクリューフレーションとは
景気には循環がある。不況の後には好況が訪れ、給料が増えることで人々は豊かさを感じる。しかし、ここ何年かの状況は、好況の時にも給料は上がらず、不況の時には一層の厳しさを強いられるようになった。
かつて「1億総中流」と呼ばれた日本から、「豊かさ」が失われつつある。豊かさが実感できない社会の背景にあるのが「スクリューフレーション」である。
スクリューフレーションとは、中間層の生活水準の低下を意味する「スクリューイング」と、物価の上昇を意味する「インフレーション」を掛け合わせた造語である。GDPが伸び、企業業績が伸びる中で、本来は豊かになるべき国民が豊かさを享受できないどころか、生活水準の低下へと向かっている現象を指す。
スクリューフレーションの背景
スクリューフレーションの背景には、グローバル化による先進国と新興国の格差縮小や、先進国での極端な金融緩和などがある。
安い人件費を武器にした新興国に対し、先進国の製造業が競争力を維持していくためには、業績が良くとも、給料を抑えざるを得ない。一方で、新興国が発展することで、食料品やエネルギーに対する需要は旺盛になり、価格が上昇していく。
給料が上がりにくい状況の中で、生活必需品が上がり続けていくので、中間層の人たちの生活が苦しくなる。
スクリューフレーションの問題点
①実質所得格差の拡大
食料やエネルギーといった生活必需品の価格上昇は、所得の低い層により大きな打撃を与える。これは実質所得格差へとつながっていく。
②地域間格差の拡大
地方では、自動車での移動が中心であり、ガソリン代が家計に占める比率が高い。また、気温の低い地域では、暖房のために多くの燃料を使う。そのため、エネルギー価格の上昇による影響は地方の方が大きい。
スクリューフレーションを生き抜く
スクリューフレーションの影響は、米国よりも日本の方が大きくなると考えられる。エネルギーや食料の自給率が先進国の中でも格段に低い日本は、最もスクリューフレーションの影響を受けやすい。
スクュリューフレーションの問題は、日本国内の景気が少しぐらい回復した程度では解決しない。経済がグローバル化した時代には、企業業績が良くなっても、社員の給与は簡単に上がらない。グローバルな競争を勝ち抜くためには、M&Aや設備投資をして人員を効率的に使うことが不可欠。今でも高いとされる日本人の人件費を上げる理由を見つけるのは難しい。
こうした状況は、新興国と先進国の格差が縮まるまで続く。日本の場合、少なくともあと10年は厳しい状況を覚悟する必要がある。