ディスカウント競争で疲弊するスーパーが多い中で、好調な業績を上げる成城石井。その経営手法をユニクロ、無印良品などもV字回復させた著者が語っている。
ディスカウントをしても売上は増えない、固定客を増やすための接客が最も重要、経営者の考えを現場で実行するマネジメントレベルを上げれば利益は増えるなど、小売業の経営で大切なことがよくわかる1冊。
小売業に携わる人は読んでおいて損をしない。
■値下げしても売上は増えない
ディスカウントして売上が増えた例はない。一時的に売上が伸びることはあっても、大体3ヶ月から6ヶ月もすると売上が低迷してくる。その理由は次の通り。
①需要の先食い
例えば、あるお客様が定価238円の「濃口醤油」1ℓが178円で特売になっていたから買うとする。まだ家に在庫はあるけど、特別に安いから買った。これは需要の先食いである。安く醤油を買ったからといって、多めに醤油をかける人はいない。単価が下がった分、売上が下がる。
②他商品からの買い換えのスイッチ買い
いつも丸大豆醤油を買っているが、あまりに安いので単価の低い濃口醤油を買ったとする。固定客で使う量が同じであるから、単価が下がった分だけ、売上が下がる。
特売により競争相手から売上を奪うという考え方はできるが、これは長続きしないことが多い。他店がディスカウントして、自店の売上が落ちたとなると、対抗しでディスカウントしてくる。価格で奪ったお客様は、他店で安売りしていればそちらに行ってしまう。
ディスカウントは「麻薬的だ」と言われている。最初は効いても、だんだん効かなくなり、売上を増やすにはもっと刺激的なディスカウントが必要になる。そして、競争相手も対抗してディスカウントしてくるから売上は低迷していく。ディスカウントは、競合との体力消耗戦になるので、規模も大きくなく体力もない小売業にはお勧めできる戦略ではない。
■接客が最も大切
成城石井はディスカウントしていないが、売上は増えてきている。ディスカウントせずに売上を確保するため、一番大切にしているのは、固定客を増やすことである。小売業の売上の大半は、固定客からである。固定客を増やさないと、長期的な売上の増加にはならない。
固定客というと、会員カードを発行することを思いつくが、お客様は他店のカードも何枚も持っているので、固定客とはならない。
お客様はいつも行く店舗を決めていることが多い。そのいつも行く店舗を変更する大きな理由が「店員の感じが悪かった」である。店舗に行かない理由として「価格が高い」「品質が悪い」に勝るとも劣らない多さである。お店のファンを増やすためには、感じのいい接客をすることが非常に重要である。
著者 大久保 恒夫
1956年生まれ。セブン&アイ・フードシステムズ 代表取締役社長 成城石井 元社長 1979年株式会社イトーヨーカ堂入社。1981年同社経営政策室経営開発部担当。経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして同社の構造改革に取り組む。 1990年株式会社リテイルサイエンスを設立し、小売業のコンサルティング、ソフトウェアの開発、販売を手がける。1998年にファーストリテイリング、2002年に良品計画の経営改革を支援し成功へと導く。2007年に成城石井の社長に就任。2011年より現職。
帯 ファーストリテイリング代表取締役 柳井 正 |
帯2 良品計画 会長 松井 忠三 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 2分 | |
第1章 安ければ売れるわけじゃない | p.11 | 12分 | |
第2章 値下げせずに利益を3倍にする方法 | p.31 | 23分 | |
第3章 売れるかどうかは売れば分かる! | p.69 | 11分 | |
第4章 100%現場で実行 | p.87 | 23分 | |
第5章 人の成長でしか会社は伸びない | p.125 | 28分 | |
第6章 システムで人と売り場の力を引き出せ! | p.171 | 20分 | |
おわりに | p.205 | 2分 |