小さなヒーロー達
東日本大震災では、色々なソーシャルテクノロジーが活躍し、その結果ソーシャルテクノロジーサービスが社会に定着する大きなきっかけとなった。
・テレビニュースのインターネット配信
地震発生から約17分後には、NHKのテレビニュースがインターネット上で配信されていた。この配信は許可をとっていない違法なものだったが、これを流したのは広島県の中学生だと言われている。この中学生の母親は阪神・淡路大震災の被災者であり、NHKのテレビニュースの配信は「世のため、人のためになる」と信じて実施した。
この中学生がニュースをインターネットで配信するまで、地震の模様を配信していたテレビ局はなかった。たった一人の中学生の行為は、その後多くのテレビ局を動かした。
・ツイッターでの震災関連の投稿
震災2日後、原発40年の経験を持つ、退職予定だった59歳の父親を心配する娘のツイッターの投稿が感動の輪をもたらした。半年後に定年を迎える父親が、自ら志願し福島原発に派遣されるという内容で、これは国内メディアだけでなく、米国のCNNまで報道に参加し注目された。
こうした個人の小さな行動が人々に影響を与え、社会の動きまで変化させている。また、震災は企業や自治体などにも、以下のような活動を促すきっかけとなった。
・セーブ・ザ・メモリー・プロジェクト
リコーは、デジタル写真をインターネット上で保管するサービスを立ち上げ、津波に汚された写真やアルバムを1枚づつ救済し、デジタル化して被災者に返却した。
・@JGSDF_pr
陸上自衛隊は、災害派遣の活動模様を発信するツイッターのアカウントを開設。現地の動画を公開するなどした。
・パーソンファインダー
グーグルは、安否確認を検索・確認できる特設サイトを立ち上げた。このサイトには、NHKによる安否確認情報も提供された。
東日本大震災は非常に不幸な出来事だったが、それが21世紀という本格的な情報社会に相応しい日本復興のきっかけ作りの始まりとなった。
ソーシャルシェアリングが日本を救う
2011年以降は「共有の時代」と言われている。共有の時代とは、ソーシャルシェアやコミュニケーションの時代であり、人々が共有しながら共存していこうとする高次元の欲求が強まっている時代を指す。
近年欧米を中心に、「モノ」「空間」「時間」をシェアしようとするソーシャルシェアビジネスが、急速に広まっている。
・ルーモラマ:旅行中に自宅を貸すサービス
・ジップカー:車をシェアするサービス
・ザーリー:用事代行をマッチングするサービス
日本は高齢化に伴い、介護などの問題を抱える。こうした問題に対処するため、今後はソーシャルシェアリングなどの仕組みを活用した時間と空間の解放が重要となる。