将来展望
日本は、すでに人口減少局面に入っており、早期に世帯数も減少に転じるため、ますます家余りになりやすい。また、親の住んでいた住宅を子供が引き継ぐとも限らなくなっている。特に過疎地では、人口の大半が流出して空き家となっている地域が、ますます増加していくことが予想される。
今後の空き家率を予測する場合、需要面で住宅需要(世帯数)、供給面では新設住宅着工戸数や取り壊される戸数が重要な要素となる。これらが現状維持のままだと、2028年の空き家率は23.7%となり、2008年の13.1%から10.6%上昇する。
空き家率の上昇を防ぐには、新設住宅着工戸数の抑制(中古住宅の活用)と空き家の除却を同時に進めなければならない。
2050年の日本の総人口は9515万人となる。東京圏の人口は当面増加した後、2020年に減少に転ずるが、他の地域では一貫して減少する。また、居住・無居住の別で見ると、2050年までに現在、人が居住している地域の内約2割が無居住化する。
現在のトレンドが続くと、2050年には、人口が減少する中で東京圏のシェアが高まるなど、人口減少と地域的な偏りが同時並行的に進行する。
こうした長期展望を基に地域別の空き家率の今後の方向性を考えると、無居住化した地域では、すべてが空き家になる。空き家数は2030年1130万戸、2050年1550万戸程度になる。
今後、空き家対策としては、まず居住地域に限定し、その上で空き家を有効に活用しながら、街づくりを行っていく必要性が増していく。
空き家対策
これまでの空き家対策は、倒壊の可能性がある建物といった危険なものの除去や、地方の空き家に都会から移住者を呼び込むといった、空き家率が特に高い地域におけるものが中心となっている。しかし、これらの対策の効果は十分に発揮されていない。
空き家率の上昇に歯止めをかけるためには、空き家の除却を増やすか、新築戸数を減らし中古住宅の活用を進めていく必要がある。空き家の積極的な活用を図っていくためには、これまでの新築を促進してきた様々な仕組みを改める必要があり、以下を検討すべきである。
①新築住宅のローン減税の廃止
②賃貸住宅経営に対する保有税・相続税の軽減措置の見直し
③買取再販リフォーム(リノベーション)促進税制の新設
④持ち家の賃貸化促進のため、改修費を補助
⑤公共賃貸住宅の一般市民への開放
⑥公共賃貸住宅の民間物件活用(直接供給の廃止)
⑦ファンドを活用した老朽分譲マンションの賃貸化の推進