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2012/08/24更新

円のゆくえを問いなおす: 実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)

209分

4P

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円高の原因

為替レートの変化には、長期的には自国と外国の物価上昇率、短中期的には名目金利、予想物価上昇率が影響を与える。この3つに影響を与えることが可能なのが、中央銀行による金融政策である。

円高の議論の中には「円高は、欧米諸国の経済不安に基づくドル安、ユーロ安というグローバルな要因が原因である」という主張がある。しかし、円高が進み始めた2007年以降の動向を見る限り、ドル安、ユーロ安というグローバルな要因による各国通貨の影響にはばらつきがあり、この主張は間違いであることがわかる。

2007年半から始まったサブプライム・ローン危機から欧州財政危機に至る現在まで、各国中央銀行は政策金利をほぼゼロにまで下げ、信用緩和政策や量的緩和政策といった形で中央銀行のバランスシートを拡大させ、マネーを増やすという金融緩和策を行ってきた。

その結果、日米、日ユーロのバランスシート比の値は、それぞれ2倍、1.8倍に達している。つまりFRBやECBと比較して日本銀行がアグレッシブに金融緩和政策を行っていないことが、予想物価上昇率を低位にとどめ、結果として円高をもたらしている。

デフレと円高を止めるために何をすべきか

1994年以降、日本はデフレ状態にある。この間、日本銀行は全く金融政策を行っていなかった訳ではない。ゼロ金利政策や、日銀当座預金残高を増やす量的緩和政策を行ったが、デフレを止めることはできなかった。しかし、一度デフレに陥った後にデフレから脱却した事例は、リーマン・ショック後のスイスやスウェーデンなどにある。

効果的な金融政策には以下の事が必要である。

①短期間に大規模な金融緩和を行う
量的緩和は、物価上昇率や予想物価上昇率をマイナスからプラスに転換させるほど十分かを検討する必要がある。日本の量的緩和政策は、他国と比較して、長期間かつ小出しの緩和であった。

②オペレーションの政策効果を高める
日本の量的緩和政策におけるマネタリーベースの増加の大半は短期国債及び残存期間1年未満の長期国債の買い取りであった。よって、長期国債の金利を下げる効果を得られなかった。

③金融政策を行う「枠組み」を明確化し、予想インフレ率への誘導を確実にする
過度な円高を生じさせず、安定的なインフレ率を確保するには、目標とするインフレ率を他の貿易相手国の多くが採用している目標インフレ率と少なくとも同程度にする必要がある。日本は他国と比較しても、現在の目標インフレ率1%を2%以上に引き上げる必要がある。

④以上を通じて、レジーム(体制)転換を果たす
金融政策が功を奏するには、政策当局がデフレ脱却に対して消極的な姿勢を転換することで、人々の予想や認識を変えることが必要となる。レジームを転換させるには、明確な政策転換が求められる。