ハーバード大学の日本史講義「LADY SAMURAI」
かつて受講したハーバード大学の「ザ・サムライ」の日本史の授業は、映画の一場面を見せて、サムライの格好良さを強調するだけのクラスだった。平清盛、源義経、足利将軍に、時として忍者。海外においてサムライと武士道は、日本の歴史文化の代名詞になっている。
これまでの日本史は、サムライとともに生きた女性が全く登場しない「半分史」であった。「Lady Samurai」では、武士道を批判するのではなく、まずは武士道の陰に隠れてきた武士階級の女性の生き方にスポットライトを当てる。その上で、彼女達の生き方と死の意味を考える。どのようにサムライとLady Samuraiが日本の歴史を作っていったかを描き出すことを目的としている。
ハーバードの学生に「Lady Samurai」のイメージを問うと、9割がたの生徒は、クエンティン・タランティーノ監督作品『キル・ビル』に登場する「武術を操る強い女性」を挙げる。対照的にトム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』に登場する男性の陰で息をひそめる女性を挙げる学生もいる。
しかし、歴史上の「Lady Samurai」はどちらのイメージにも重ならない。このクラスでは、戦国時代に残された史料をたくさん見ていく。そこには「女性らしさ」よりも「サムライらしさ」を強く反映した女性の役割が登場する。
代表的な例が秀吉の正室の北政所ねい。その記録や書簡によれば、大名の本妻たちは、それぞれの城を拠点として、手紙で戦場の夫と交信しながら城や城下町の番をしていた。妻は城下町の統治に関する意見を言ったり、統治者の決定をくつがえすことができた。大名の妻というLady Samuraiは、その地域の支配者に影響力を持てる唯一の人材であり、尊敬すべき存在であった。そして、男女それぞれに役割があり一対で「サムライらしさ」を作り上げていった。
学生達は一つ一つの史料から、サムライの陰にいて、今までの日本史の授業に出てこなかった女性が、ペアの役割を持ち活躍してきた様子を理解していく。
ハーバード大学の日本史講義「KYOTO」
場所を主体とした歴史は、大学の歴史の授業では珍しい。ここでは体験型の教授法を導入している。その特徴は以下の通り。
・現代版地図と古地図を見比べながら、「洛中洛外図」の現代版を書く
・初めて日本を見た宣教師の書簡をもとに、4名のグループでイメージをプレゼンする
・戦国から江戸の京都にタイムトラベルした仮定で短いエッセイを書く
・当時の外交についてポッドキャストで番組を作る
・参勤交代の大名行列に出会った時をテーマに6分間の映画を作る