ハーバード大学で日本史の授業を人気講義にした著者が、その講義の概要やハーバード大学の様子を伝えています。これまでハーバード大学では、日本史の講義は、せいぜい数名が集まる程度のクラスだった。なぜ、それを250人を超えるまでの講義にできたのか?
■ハーバードの先生になるまで
九州の高校卒業後、初めての海外旅行先のカナダに行きたくなり、ブリティッシュ・コロンビア大学に留学。数学と生命科学を専攻していたが、日本史を専門とする教授のアシスタントのアルバイトをしたことがきっかけで、大学院で日本史の勉強をする。
大学院への進学を控えた夏、ハーバード大学のサマースクールに短期留学。そこで「ザ・サムライ」という名前の日本史のクラスを受講した。授業は、もっぱらサムライ文化を賞賛するだけのもので、サムライだらけの日本史に違和感を持つ。
実際の史料には、サムライのそばに多くの女性が登場する。「ザ・サムライ」の授業の後、「Lady Samurai」が必ずいると考えるようになった。
カナダの大学院で日本史を学んだ後、プリンストン大学の博士課程に進学。その後、ハーバード大学の「カレッジ・フェロー」というポジションで日本中世史の募集があり、採用されることになる。
独自の日本史講座は、初年度16人の受講生から始まり、3年目には251人の受講生を集める人気講座となっていく。
■人気講座を作ることができた秘密
大きなクラスを成功させる大前提は「準備がすべて」ということ。誰かに物事を教える仕事をうまくこなす秘訣の99%は、準備段階にある。準備に力を入れずに、出たとこ勝負ではすぐに限界がくる。この大前提を踏まえた上で、学生から人気を獲得する方法は次の通り。
①聴覚を意識的に使わせる
大学の授業では、パワーポイントやキーノートというプレゼン用ソフトを使うのが一般的で、視覚を利用するのが有用な教授法とされている。この方法に加えて、目をつぶって音楽を聴いてもらった後に話を進めたり、講義の途中にバックグラウンド音楽を流したり、ラップを作ったりする。
②お絵描きを取り入れる
学生にパソコンを閉じさせ、白紙に「お絵描き」を指示する。一瞬で描いた絵画の中に入っている要素と入っていない要素は、本人にとって問題点や興味の対象が一目瞭然になる結果をもたらす。聞いたことを吸収する手段として「お絵描き」は優れた方法である。
③全身を使った授業を取り入れる
数名を指名して、授業のたとえ話に参加してもらったり、演壇に上ってもらい、盆踊りなどのダンスを踊ってもらう。
著者 北川 智子
1980年生まれ。ハーバード大学 東アジア学部レクチャラー カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で数学と生命科学を専攻、同大学院でアジア研究の修士課程を修了。プリンストン大学で博士号を取得。2009年よりハーバード大学で教鞭をとる。 専門は日本中世史と中世数学史。学内の「ティーチング・アワード」「ベスト・ドレッサー賞」受賞、「思い出に残る教授」選出。
週刊 東洋経済 2012年 7/7号 [雑誌] |
日本経済新聞 |
エコノミスト 2012年 7/3号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.3 | 2分 | |
第1章 ハーバードの先生になるまで | p.11 | 26分 | |
第2章 ハーバード大学の日本史講義1―LADY SAMURAI | p.55 | 22分 | |
第3章 先生の通知表 | p.93 | 26分 | |
第4章 ハーバード大学の日本史講義2―KYOTO | p.137 | 22分 | |
第5章 3年目の春 | p.175 | 8分 | |
あとがき | p.189 | 1分 |