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2012/08/09更新

デザインのデザイン

  • 原 研哉
  • 発刊:2003年10月
  • 総ページ数:224P

164分

4P

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デザインとは何か

消費への欲望は「新奇性」によって鼓舞される。20世紀後半の世界の中で、デザインは「経済」を主な動力源として進展していった。デザインは「品質」「新奇性」「アイデンティティ」を提供するサービスとして働き始めた。

現在のデザインは、テクノロジーがもたらす「新奇の果実」を社会にプレゼンテーションする役割を担わされ、歪みを加えられている。「今日あるものを明日古く見せる」ことに力を発揮し、その傾向を強めてきている。

しかし、デザインは経済やテクノロジーの召使いになり果てた訳ではない。デザインは「形と機能の探究」という理想主義的な思想を抱えており、産業社会の中で、最適なものや環境を計画していく理性的・合理的な指針として役割を果たしてきた。

そして、今日のデザイナーたちは、見慣れた日常の中に無数のデザインの可能性が眠っていることに気づき始めている。新奇なものをつくり出すだけが創造性ではない。見慣れたものを未知なるものとして再発見できる感性も同じ創造性である。

ものの見方は無限にあり、そのほとんどはまだ発見されていない。それらを目覚めさせ活性させることが「認識を肥やす」ことであり、ものと人間の関係を豊かにすることに繋がる。形や素材の斬新さで驚かせるのではなく、平凡に見える生活の隙間からしなやかで驚くべき発想を次々に取り出す独創性こそがデザインである。

デザインは単につくる技術ではない。むしろ耳を澄まし目を凝らして、生活の中から新しい問いを発見していく営みがデザインである。人が生きて環境をなす。それを冷静に観察する視線の向こうに、テクノロジーの未来もデザインの未来もある。

アートとデザインの違い

人間が暮らすことや生きることの意味を、ものづくりのプロセスを通して解釈していこうという意欲がデザインである。一方、アートもまた、新しい人間の精神の発見のための営みであると言われる。両者とも、感覚器官でキャッチできる対象物をあれこれと操作する「造形」という方法を用いる。

アートは個人が社会に向き合う個人的な意志表明であって、その発生の根源は個的なもの。だからアーティスト本人にしかその発生の根源を把握することができない。そこがアートの孤高でかっこいいところである。もちろん、生み出された表現を解釈する仕方はたくさんある。

一方、デザインは基本的に個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある。そのプロセスの中に、人類が共感できる価値観や精神性が生み出され、それを共有する中に感動が発生するというのが、デザインの魅力である。