過剰結合
インターネットの広がりは広範で、最先進国と最後進国の別を問わず人々に影響を及ぼしている。地域的な問題は全国に広がり、全国的な問題は国際問題へと発展してしまう。今日ではインターネットにより、あらゆる結びつきが強化され、社会は相互依存の度合いを強めている。インターネットが生み出した「過剰結合」は様々な問題を生む。
2008年の金融危機は「過剰な結びつき」が原因であった。当時、顧客は最も有利な金融商品をインターネット上で選ぶことができた。このため市場はより競争的になり、サブプライムローンのブローカーはいち早く対応を迫られるようになり、適性な資産評価を行えなくなっていった。ブローカーは一番高い鑑定額をつけてくれる鑑定士を選び、さらにインターネットは鑑定のプロセスを簡略化し、価値を押し上げた。
正のフィードバック
社会を予測のつかない新たな局面へと向かわせる原因は「正のフィードバック」と呼ばれるものである。正のフィードバックとは「ある変化がさらなる変化を促す」という意味であり、結果の望ましさは関係ない。この正のフィードバックこそが過剰結合を引き起こす。
フィードバックは、ループ状の経路をたどる。ある源から別のところへと情報が伝わり、それがまた逆転する。フィードバック・ループが長くなると、結びつきが強まり、大きな正のフィードバックが起きやすくなる。正のフィードバックが起きると、当初の刺激がループを循環してさらに大きな刺激となってかえってくる。この増幅がシステムを一方向に加速させ、急激な変化を引き起こす。
では、どうする?
非常に複雑で高度に結合したシステムは、複数の機能不全が同時発生し、事故や大災害を防ぐことができなくなるリスクを伴う。いったん事故が起こると、それは高い頻度で感染する。「結びつき」と「正のフィードバック」が感染を広げていく。これは経済や思考などにもあてはまる。過剰結合の問題を緩和するには、次の3つの策がある。
①ブレーキをかける
正のフィードバックの水準を下げ、それが引き起こす事故を減らし、思考感染を緩和し、予期せぬ結果を全体的に減らす。そのためには、物事が手に負えなくなる前にブレーキをかける必要がある。例えば、金融危機に対しては、金融機関に対する規制を強化する。
②堅牢なシステムをつくる
当初の段階からそもそもほころびが生じない堅牢なシステムを設計する。そのためには、過剰結合の影響を予測する必要があり、以下の対応が挙げられる。
・応急処置で解決しようとしない
・安全域を十分にとる
・不必要な結びつきを作らない
・本質的に危険なシステムを作らない
③新しい環境に備える
つながりあった世界を受け入れて、新たな環境でやっていけるように制度を改革する。