身体能力は、人種によって異なるのかについて解明している本。オリンピックの陸上競技や米国のスポーツで活躍する黒人選手を見ると、黒人は生まれながらに優れた身体能力を持っているかのように見える。
しかし、それは本当なのか?
■黒人の身体能力は生まれつき優れているのか?
「黒人の身体能力は生れつき優れている」という主張があふれている。実際、メディアを通して目にするオリンピック競技の競争種目や、ベースボールやアメリカン・フットボール、バスケットボールといったアメリカ生まれのスポーツの試合では、黒人が圧倒しているように見える。例えば、オリンピックの直近の過去7大会の競争種目男子100mの決勝で、スタートラインに立った56人はすべて黒人である。
黒人と近代スポーツの出会いは、19世紀から、競技によってはそれ以前からあったが、当時、黒人アスリートの身体能力が特別視されることはなかった。黒人を「天性のアスリート」と見なすステレオタイプや生得説は、20世紀になって生まれた。
「黒人の身体能力は生れつき優れている」という主張は間違いである。これは、1930年代以降、黒人アスリートの台頭に対し、白人の敗北を弁護するための口実として広まった言説である。
短距離走、長距離走など黒人選手の活躍が目立つが、これは先天的な才能だけでは説明できない。この優越は、文化的・歴史的な背景及び、後天的要因によってもたらされるものである。
著者 川島 浩平
1961年生まれ。武蔵大学人文学部教授 共立女子大学研究助手などを経て、1998年武蔵大学人文学部助教授、2003年より現職。専攻アメリカ研究。
週刊 東洋経済 2012年 6/23号 [雑誌] |
日本経済新聞 スポーツジャーナリスト 藤島 大 |
日本経済新聞 2回目 スポーツライター 玉木 正之 |
情報考学 Passion For The Future 橋本 大也 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序章 黒人と身体能力―生まれつき優れているのか | p.3 | 8分 | |
第1章 「不可視」の時代―南北戦争以後~二〇世紀初頭 | p.15 | 24分 | |
第2章 人種分離主義体制下―二〇世紀初頭~一九二〇年代 | p.51 | 26分 | |
第3章 「黒人優越」の起源―身体的ステレオタイプ成立と一九三〇年代 | p.91 | 29分 | |
第4章 アメリカンスポーツ界の人種統合―すべてはベースボールから始まった | p.135 | 20分 | |
第5章 台頭から優越へ―メダル量産と黒人選手比率の激増 | p.165 | 22分 | |
第6章 水泳、陸上競技と黒人選手―「黒人」としての特質なのか | p.199 | 21分 | |
終章 「強い」というリアリティ―歴史、環境、多様性 | p.231 | 8分 | |
あとがき | p.243 | 4分 |