経営はお金だ
松下幸之助創業者の大切な教えの1つに「経営はお金だ」という考え方がある。経営の結果として一時的に投資などで減ることはあっても、最終的に「お金=キャッシュ」が貯まっていかない経営はどこかおかしいというものである。
お金を生み出す事業を育てるには現状を常に改革し、ビジネスモデルを効果あるものに変革していく必要がある。その戦略の根底にあるのが、貸借対照表(B/S)を軸にした経営である。経営革新は損益計算書(P/L)からは生まれてこない。P/Lから生まれるのは改善にすぎず、抜本的に企業体質を変化させるには、トップが主導しB/Sの構造を変えていくことが不可欠である。
松下の事業計画制度の原点は、お金と資金繰りである。創業者は徹底して幹部教育をされた。在庫については、どうしてこんなに在庫があるのか、機械が動いていないとなぜ稼働していないのか、受取手形についても、なぜこんなに長いサイトなのか、会社のそうした全ての資産について、お金が眠っていることになると、徹底して指摘し指導された。
パナソニックの経理「伝統の8項目」
パナソニックの経理には、経理社員制度を支える「伝統の8項目」と呼ばれる家訓のようなものがある。
①経営の羅針盤
パナソニックの経理責任者は、事業部長の女房役として位置付けられる。「経理の乱れは経営の乱れに通じる」と言われ、「経営の羅針盤」の役割を果たすことが求められる。
②ダム式経営
企業も経営(資金)のダムをつくり、最悪の事態に備えることが肝要である。
③自主責任経営
収益・財務両面で大幅な権限委譲を行う経営は、良好な上下の信頼関係から生まれるもの。とりわけ、配慮の行き届いた報告は「任せ任される」自主責任経営の鍵である。
④現場現物主義
事業場へ行ったらまず製品倉庫を見る。決算書の数字だけでは見えないものがある。「数字の裏に人があり物がある」。現場へ足を運べ、実態は現場にある。
⑤日々完結
毎日、仕訳から残高試算表を作成し、B/Sを確認する。「一日一日が決算」。
⑥自己資金中心主義
お金は人の身体でいう血液。「貸方を律し借方を攻める」とともに、内部留保を厚くして自己資金で事業資金を賄うことが最良である。
⑦厳正公平
事業場は自主責任経営のもと、自由奔放で創意溢れる経営を行う。それだけに経理は、共通の尺度(経理規程)で是々非々を判断し、厳正かつフェアに行動せねばならない。
⑧血の通う経理社員制度
経理社員は、事業場長と経理担当役員の二君に仕える。経理の厳正を期すため、経理社員は一貫して本社がその身分を保証し教育する。