パナソニックの元CFOが、2000年以降の経営改革の裏側や、創業者松下幸之助から学んだことを語っている。経営トップを支える役割として重要なCFOの心得や、パナソニックの経理のしくみを知ることができ、企業の経理マンや財務担当者にとっては参考になる内容。
■創業者・幸之助から学んだこと
①不易流行
「不易流行」とは、いつまでも変化しない、本質的なものを忘れない中で、時代環境に応じて新しく変化していくものを取り入れていくこと。パナソニックにとっての不易は経営理念である。
企業の基本は、経営理念を軸にして、人を大切にすることで、その人々の能力や知恵を結集して、社会の公器として貢献し続けること。そして、時代に合わせて変化していく改革を常態化していくことが大切である。
②実践経営哲学
創業者は「商品を売る側に経営理念を売れ」と言われた。売る商品やサービス、行動全てが、経営理念が形になったものでなければならなかった。企業の存在目的は経営理念を、現場において実践の中で展開することに意義がある。そして、その理念を現場に落とし込むのが経営者の役割である。
③経営と経営学は違う
経営学は教えることも学ぶこともできるが、経営は学ぶことも教えることもできない。自分で実践の中から体得しなければならない。やり方はみんな違っていい。千差万別、成功の方法は無限にある。経営のコツは、仕事の悩みからヒントを得て解決する時に見つかる。
④好況よし、不況なおよし
商売は時世時節で、損もあれば得もあると考えるところに根本の間違いがある。商売というものは不景気でもよし、好景気であればなおよし、と考えなければならない。商売上手な人は、不景気に際して、かえって進展の基礎を固めうるものである。
⑤窮地でも考える
創業者の『不況克服の心得』は、何度もくじけそうになる心を奮い立たせた。
・「不況またよし」と考える
・原点に返って、志を堅持する
・再点検して、自らの力を正しくつかむ
・不退転の覚悟で取り組む
・旧来の慣習、慣行、常識を打ち破る
・時には一服して待つ
・人材育成に力を注ぐ
・「責任は我にあり」の自覚を
・打てば響く組織づくりを進める
・日頃からなすべきことをなしておく
著者 川上 徹也
パナソニック株式会社経理大学学長 1965年松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社。2000年同社取締役、常務、専務、副社長を経て、2007年同社松下経理大学(現経理大学)学長に就任。 現在、大阪国税局間税協力会連合会会長。日本CFO協会理事。関西学院大学大学院経営戦略研究科客員教授。財団法人松下政経塾監事。日本証券業協会自主規制会議副議長。経済産業省高度金融人材産学協議会会長。
帯 一橋大学教授 伊藤 邦雄 |
エコノミスト 2012年 7/24号 [雑誌] 甲南大学特別客員教授 加護野 忠男 |
WEDGE |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 ドキュメント・決算発表 | p.13 | 15分 | |
第2章 聖域に踏み込む改革 | p.35 | 17分 | |
第3章 知られざる「もう一つの改革」 | p.61 | 17分 | |
第4章 キャッシュ・イズ・キング! | p.87 | 20分 | |
第5章 経理のしくみ改革が会社を変えた | p.117 | 12分 | |
第6章 CFOの役割 | p.135 | 26分 | |
第7章 創業者・幸之助から学んだこと | p.173 | 20分 | |
第8章 私の会社人生 | p.203 | 11分 | |
おわりに | p.219 | 2分 |