ユニクロの成長過程や経営戦略がよくまとめられている本。
どのような変遷を経て、成長してきたのか。海外進出の取り組みや、バングラディシュにおけるBOPビジネス、姉妹ブランド「ジーユー」の戦略まで、多くの事例が紹介されており、過去から最新のユニクロを知る上で最適な内容になっている。
■なぜ山口の零細企業が、世界一を目指すまでになったのか?
ユニクロは、地方のありふれた衣料品店として出発したがゆえに、世界に羽ばたくまでの大成長が可能になった。その背景は以下3つ。
①地方市場の限界性
地元に大きな市場がない。だから、ユニクロは成長しようと思えば、地元以外の他所へと、どんどん進出していかねばならなかった。
②地方立地の優位性
雑音の入らない地方だからこそ、ユニクロ独自の「理念重視型経営」が、研ぎすまされた。
③地方ゆえの劣等感と渇望感
「山口は日本の辺境だ」という、コンプレックスが、ユニクロを引っ張る強烈な意志とエネルギーに転化した。
■「ユニクロ栄えて国滅ぶ」の誤謬
「デフレで価格が下がって、最初は消費者が喜ぶが、そのうち各社安売りの消耗戦となり、製造業まで巻き込んで日本企業がどんどん疲弊し、結果的に国民全体の所得と雇用が低下する。」
確かに従来と同じ価値、同じ機能しか持たない商品やサービスを、各社が単純に値下げ競争するだけなら、市場と経済は萎縮する。しかし、ユニクロやH&M、あるいはIKEAやコストコなど、ニュータイプ低価格業態の商品や売り方は、今までになかった市場を顕在化させ、新たな消費を生み出し、内需を拡大したという意味で、デフレとは対極をなす。
■成熟消費社会における必勝法
1990年以降、モノは完全に行き渡り、今度は逆にモノが売れない「モノ余り」の時代となる。消費者の立場からすると、とりたてて「欲しいモノ」がない。加えて、人口はマイナス成長に転じた。モノに対する需要は、今後ますます減退する。中でも不要不急消費の代表である衣料品は、今や最も売りにくい商材部門と言える。
価値があって、なおかつ安くなければ売れない。現代の消費者は、「理由のある安さ」を求めている。ユニクロやH&Mは、自社リスクのSPA(製造小売)企業だから、高品質な商品やトレンディな商品を安く販売できる。消費者はそれを認識した上で買っている。
ただし、今日のユニクロが支持される最大要因は「新たな市場の創造」にある。これまで潜在化していた需要を、独自の商品やマーチャンダイジング、売場や売り方、販促などで顕在化させ、新たな市場を発生させる。これが、不況下の成熟消費社会における、究極の必勝法である。
新たな市場の代表例が「ヒートテック」。単に「高機能・高品質でリーズナブルな価格の肌着」という従来の括りにとどまらず、新たなマーケットカテゴリーを作り上げた。
著者 月泉 博
1954年生まれ。シーズ代表取締役 山一證券、流通誌編集記者などを経て、1991年株式会社シーズを設立し代表取締役に就任。商業開発ディレクターとして、SCや大型商業施設、新業態開発などにおける調査、企画、指導業務にあたる。
日本経済新聞 |
帯 ファーストリテイリング代表取締役 柳井 正 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 8/4号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 章 この時代におけるユニクロの意味と意義 | p.9 | 8分 | |
第1章 「ジャパニーズ・ドリーム」の復権 | p.21 | 14分 | |
第2章 新たな市場の創造 | p.42 | 9分 | |
第3章 「服は情報である」 | p.55 | 7分 | |
第4章 「ユニバーサル・クロージング」という革命 | p.65 | 8分 | |
第5章 モノづくりにかける意気込みと執念 | p.77 | 8分 | |
第6章 ヒートテック開発秘話―東レとの生産協業革命 | p.89 | 9分 | |
第7章 ユニクロの突破力 | p.103 | 30分 | |
第8章 すべての正解は店の現場にある | p.149 | 9分 | |
第9章 広告宣伝とブランディングの独創 | p.163 | 15分 | |
第10章 ユニクロは世界をとれるのか? | p.185 | 27分 | |
第11章 「UIP」という究極の取り組み | p.226 | 6分 | |
第12章 「ビジネスとCSRは車の両輪である」 | p.235 | 9分 | |
第13章 第2のユニクロを目指す「ジーユー」 | p.249 | 6分 | |
終 章 柳井正という永遠の壁 | p.258 | 9分 |
「UNIQLO(ユニクロ)」の店・ブランド名で、カジュアル衣料品の生産販売を一括して展開する日本の会…
成功は一日で捨て去れ (新潮文庫) [Amazonへ] |
柳井正の希望を持とう (朝日新書) [Amazonへ] |
一勝九敗 (新潮文庫) [Amazonへ] |
柳井正 わがドラッカー流経営論 [Amazonへ] |