借金を返すと儲かるのか
「借金を返すと儲かるのか」という質問に対しては、以下の解答が考えられる。
①利益は変わらない
借金を返すということは「(借方)借入金/(貸方)現金」という仕訳になるから、利益に影響を与えない。
②利益が増える
借金を返すということは、将来の金利負担が減るから、利益は増える。
③利益が減る
もし、負債利子率以上の投資案件があったら、資金を借入金の返済に充当してしまうことで、機会損失が生じて利益が減る。
これらはいずれも正解と言える。それぞれ、「簿記的な考え方」「会計・経営的な考え方」「財務・ファイナンス的な考え方」と問題の捉え方の階層が異なる。経営上の問題を検討するにあたっては、複数の階層の存在を認識した上で、意思決定する必要がある。
「決算書の動的な変化」を学ぶためには、「簿記」は必要ない。たった一つの「会計の公式」さえ身に付ければ、すべての問題を解くことができる。
会計の公式
貸借対照表の左側に上から「資産」「費用」のブロック、右側に上から「負債」「資本」「収益」のブロックを積む。貸借対照表と損益計算書の重なり部分が「利益」を表す。会計ブロックを積む時のルールは次の通り。
①列は右と左の2列
②「会計の公式」で定めた位置に積む
③右と左に同じ大きさのブロックを積む
会計ブロックは2列のテトリスと考えればわかりやすい。「会計の公式」における定位置と反対に積む時は、その大きさだけブロックを取り崩す。
また、会計ブロックの積み方にはルールがあるため、損益計算書だけを変化させることはできない。利益が増減する時は、貸借対照表にも影響が発生する。
会計ブロックの組み合わせには8種類しかない。その内、利益に変化が生じるのは、損益計算書項目(収益、費用)を含む組み合わせの時だけである。つまり、基本構造を一言で言うと、次の通りになる。
・資産が増えて利益が減ることはない
・負債が増えて利益が増えることはない
キャッシュフロー
キャッシュフローを見るには、5つの会計ブロックの内、「資産」のブロックを「現金」と「その他資産」に区分する。「現金」のブロックの大きさの変化がキャッシュフローを表す。
利益の動きとキャッシュフローの動きは、必ずしも一致しない。例えば、取引時に現金で決済せず、一定期間後に代金を支払う掛取引であれば、収益のブロックを積んでも、反対側には「その他資産」のブロックがくるため、キャッシュフローは変化しない。
後日、代金を回収し「その他資産」のブロックを右側に積み、左側に「現金」のブロックを積むことで、キャッシュフローが増加する。