会社の価値は「志」のあり方で決まる
社長は組織を動かすために、日々の業務の前提となる原理原則を決める必要がある。その時に大切なのは、単に方針を示すだけでなく、会社としての「理念」、つまり「志」を明確に掲げることである。
会社の価値はこの志のあり方で決まる。単に多くの収益を上げることが「いい会社」の条件ではない。利益の追求も大事だが、いくら儲けても品位の感じられない安っぽい会社は社会的に高く評価されないだろう。
人間にとって何がつらいといって、自分が何の役にも立っていないと感じるほどつらいことはない。その仕事を通じて社会にコミットメントして、世のため人のために役立っているという実感が得られた時にはじめて、私たちは働く喜びや生きがいを持つことができる。それが「仕事の楽しさ」というものである。
だからこそ、社長が掲げる原理原則の中には「理念」が欠かせない。人使いの要諦は、そこにある。自分たちの仕事がどういう形で世の中の役に立つのか、その社会との接点をいかにうまく、わかりやすく説明するかが大事である。
最後にものをいうのは人柄
会社の業績は社員のやる気に大きく左右され、社員のやる気は評価制度に大きく左右される。しかし、会社の業績は、それが誰の「手柄」なのか特定するのが難しい。たまたま配属された部署に恵まれて良い結果が出せた者もいるだろう。その逆もある。
会社の役に立つ社員とは、「仕事ができるかどうか」とは関係ないのではないか。世の中というもの、仕事上のスキルは足りなくても人柄のいい人間の方が役に立つようにできているのではないか。会社の業務は、すべて人間が人間のためにやること。そうであるなら、最後はよりよい人間性を持った人間ほど、そこで大きな貢献を果たすように思われる。
社員のやる気を引き出す
目標に向かって論理を積み重ねていくことは必要だが、企業の経営は数学の計算問題とは違う。同じ経営資源を同じように投入しても、いつも同じ売上や利益が出るというものでない。それは、企業活動が業務に携わる人間たちの「やる気」に大きく左右されるからである。
経営者としては、やる気のある社員を一人でも多くするにはどうしたらいいか常に考えなければならない。だが、これは人間の心の問題だから、知恵だけではどうにもならない。これは「情」の世界である。社員が会社の理念を実現しようというやる気を引き出せるかは、経営者や現場の上司がどれだけ人間としての魅力を持っているかにかかっている。
社員が持つやる気の中で最も強いのは「この人のために一生懸命やろう」というものである。そういう気持ちで仕事をしてもらうには、それぞれの社員が「自分は上から頼りにされている」と思えるようなコミュニケーションを日頃から心がけることが大切である。