名経営者として名高いヤマト運輸元会長による仕事論。
経営にとって大切なこと、つまらない仕事を楽しくする方法などの原理原則がわかりやすく書かれています。
今、仕事で大変な思いをしている人や若い起業家へ向けたメッセージ。
同氏による名著 『小倉昌男 経営学』と合わせて読みたい1冊。
■意に染まない仕事を面白くする
仕事は収入を得る手段だが、決してそれだけが目的でやるものではない。それを通じて持てる能力を発揮し、自分らしさのようなものを表現できるとすれば、それも仕事から得られる果実の一つである。つまり仕事とは、自己実現の手段でもある。
仕事には「好きな仕事」と「意に染まない仕事」の2つの種類がある。どんな会社であれ、好きな仕事だけやらせてもらえる人間はほとんどいない。意に染まない仕事であっても、せっかく限りある人生の中で時間を割くなら、それを自己実現の手段にしなければ損である。
意に染まない仕事を楽しめるようにするには、目標を見定めること。仕事の面白さは、目標そのものの面白さだけでない。それを達成するために知恵をふりしぼって考え、試行錯誤することも、仕事の面白さの一部である。その目標自体の価値がどうであれ、それを実現するための方法を一生懸命に考えればいい。
■「なんでだろう」で仕事がおもしろくなる
仕事が楽しくないと感じるのは、そこに「自分」が感じられない時だろう。なぜなら、仕事は自己実現の場でもあるからである。意に染まない仕事は、なんらかの形で「自分の仕事」だと感じられるようにする必要がある。
これには与えられた仕事をどのようにこなし、いかに目標を達成するか「自分の頭」で考えればいい。たとえ最初は興味の持てなかった分野でも、自分の頭を使って真剣に考えれば、自分なりの発見もあるだろう。新しいアイデアもわいてくるはず。それによって、最初は他人から押しつけられただけの仕事が「自分のもの」と思えるようになり、面白がって取り組めるようになる。
仕事というものは自分の頭で考えてやらなければ意味がない。マニュアルどおりに行う仕事でも、頭の使いどころはいくらでもある。自分の頭で考える第一歩は「なんでだろう」と疑問を持つこと。旺盛な好奇心を持ち、自分の頭で考えられる人間は、退屈な仕事を与えられても「なんでだろう」の対象にできる。
どこかに「好きな仕事」があるのではなく、目の前にある仕事を好きになれるかが大事である。最初は意に染まないと思っていた仕事でも、やっているうちに面白くなるということはいくらでもある。
著者 小倉 昌男
1924年生まれ。ヤマト運輸元社長。 大学卒業後、父・小倉康臣氏が経営する大和運輸(現・ヤマトホールディングス)に入社。入社後半年で肺結核を患い4年間の入院生活を送る。退院後静岡県の子会社の再建を手がけたのち本社に復帰し、1961年に取締役となる。 1971年、康臣氏の後を継いで社長に就任。1976年、オイルショック後に低迷していた大和運輸の業績回復のため、『宅急便』の名称で民間初の個人向け小口貨物配送サービスを始めた。サービス開始当時は関東地方のみだったが、その後、配送網を全国に拡大し、ヤマト運輸(1982年に商号変更)が中小の会社から売上高一兆円の大手運輸会社に発展する基礎を築く。1987年、会長に就任。 1995年に会長を退任後は、ヤマト福祉財団理事長として障害者が自立して働く場所作りに取り組んでいた。2005年逝去。
週刊 ダイヤモンド 2012年 6/30号 [雑誌] 丸善丸の内本店「松丸本舗」売場長 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 経営者は「志」を持て | p.11 | 19分 | |
第2章 人を動かすのは「知恵」より「情」 | p.57 | 18分 | |
第3章 仕事に惚れる | p.101 | 19分 | |
第4章 「いい循環」と「悪い循環」 | p.147 | 20分 | |
第5章 何が大切かを考える | p.197 | 27分 |