マイクロファイナンスの仕組み
融資の仕組みは、「お金を借りて返せなかったら、自分が住んでいる村やコミュニティに対し連帯責任が及ぶ、または面目が立たなくなる」というグループの力学を活かしたものである。
マイクロファイナンスは、この仕組みにより、借り手のモラルハザードの問題を解消している。元々は金融機関側が負担していた情報発見コスト(信用調査のコスト)を借り手側が負担することで、資本コストを下げている。
マイクロファイナンスが抱える問題
多くのMFIは、貧困削減を第一のミッションとしてNGOや互助組織から事業を始める。その事業が拡大していく過程で、多くのMFIは免許を取得し銀行となる。この過程で、MFIに商業主義的な色彩が濃くなっていく傾向がある。そして、ビジネスとしての持続可能性の維持と貧困削減のミッションの両立が難しくなってくる。
メキシコ最大のMFIコンパルタモスは、MFIとして初の株式上場を行い、賛否両論を巻き起こした。コモンパルタモスも投資家代表は、株式上場は更なる資本を呼び込むために必要であると主張する。
一方で、貧困削減をミッションとして掲げるMFIが株式上場することに対し、批判する人も多い。グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスはMFIは「貧しい人々を高利貸しから守るためのものであり、新しい高利貸しをつくるためではない」と批判した。
コモンパルタモスは借り手に対し70%の金利を要求している。妥当な金利水準は、マイクロファイナンスにおける平均的な30%程度だろう。但し、コンパルタモスの金利については、メキシコのMFIが寡占状態にある点にも起因する。金利抑制には規制よりも競争促進が必要である。
インドではマイクロファイナンスによる多重債務問題が社会問題化しており、自殺者が後を立たない。史上2番目に上場したMFI、インドのSKSは苛烈な取り立ての実態を認識していたことが暴露された。これは容認できることではない。
しかし、SKSにより恩恵を受けた人々も少なくない。人々の経済的自由の実現のためにはMFIが成長することは必要なことであろう。
投資ファンドの台頭
MFIは外部の投資家から資金調達を行っている。マイクロファイナンスの潜在需要は2800億ドルあり、MFIが提供しているのは半分に満たないと言われる。今後、マイクロファイナンスを対象とした投資ファンドがさらに拡大すると考えられる。
しかし、これには投資ファンドが、国内MFIの寡占化を促進させると同時に過度の資金余剰をもたらし、MFIセクターの健全な成長を阻害する可能性がある。