格安航空会社(LCC)は「薄利多売」ではない。実際には既存の航空会社よりも、高い利益率を維持している。
LCCのビジネスモデルの特徴を紹介し、その収益と費用構造を分析。なぜ、既存の航空会社が業績不振にあえぐ一方で、LCCは好調なのか。その仕組みを紹介している。
「超低価格」を実現しながら、高い収入を得るためのLCCの戦略からは、他の業態にも生かせる多くの教訓を得ることができる。
■LCCに必要なこと
LCCの先駆けと言われる、サウスウエスト航空が運航を始めたのは1971年。以降、1985年にライアンエアー、1988年にジェットブルー航空が創業した。2009年までに誕生したLCCは178社。一方で倒産、撤退、消滅に至ったLCCは52社を数える。その生存率70%。
LCCは、超低コストだけでは成功しない。多い旅客数をコンスタントに確保し、高い搭乗率を維持しなければならない。成功しているLCCは、年間を通じて75%以上の搭乗率を維持している。
高い搭乗率のためには、マーケティングが重要になってくる。市場に潜在需要があるかを見極め、需要の掘り起こし、宣伝効果の予測、可能性がない場合の引き際まで考える必要がある。
■既存の航空会社とLCCの比較
既存の航空会社とLCCでは、利益を出すための「収入と費用の配分」が大きく違っている。LCCは低コスト構造ゆえに、大きな利益を上げることができている。
①収入
・座席数
既存:160席 格安:180席
・搭乗率
既存:69% 格安:76%
・1000kmあたりの収入単価
既存:7210円 格安:4470円
・1000kmあたりの収入
既存:791000円 格安:613000円
②費用
・1席あたりのコスト
既存:5410円 格安:2410円
・機材稼働率
既存:100% 格安:107%
・1000kmあたりのコスト
既存:866000円 格安:434000円
③利益
既存:▲75000円 格安:179000円
著者 赤井奉久
航空経営研究所 代表取締役 研究所長 日本航空の経営企画、経理部門にて、長年経営・収支・コスト等の分析及び計画立案に携わる。のち日本航空グループの経理、給与計算業務を集中処理する子会社を立ち上げ社長に就任。 2007 年に退職し、航空経営研究所を設立。明海大学、文化学園大学講師。
著者 田島由紀子航空経営研究所 主席研究員 日本航空にて主に国際旅客の空港業務に携わる。サービス訓練グループ長として、サービス向上や多くの国際旅客人材育成に活躍。 2007 年に退職し、航空経営研究所に入所。内外の航空情報の収集・調査・分析を行うとともに、企業や大学で、人材育成・接客・クレーム対応等の講座を実施。明海大学講師。
日経トップリーダー |
日本経済新聞 早稲田大学アジア研究機構教授 戸崎 肇 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 格安航空会社の経営理論とビジネスモデル | p.13 | 28分 | |
第2章 超低コストの公式 | p.59 | 33分 | |
第3章 高搭乗率と利益の公式 | p.113 | 34分 | |
第4章 スタッフの力が倍になる秘密 | p.169 | 17分 | |
あとがき | p.197 | 2分 |