キャズムを越えた後の市場
テクノロジー・ライフサイクル・モデルは、全体として6つの領域に分かれる。
①初期市場
テクノロジー・マニアやビジョナリーが顧客となる時期。
②キャズム
初期市場の興味が冷める一方、メインストリーム市場は、製品の未熟さを嫌って、まだ食指を動かさない時期。
③ボウリング・レーン
新製品がメインストリーム市場のニッチには受け入れられているが、まだ広く一般には普及していない時期。
④トルネード
メインストリート市場が開花する時期。一般の顧客層が、新しいパラダイムをインフラとして採用しはじめる。
⑤メイン・ストリート
アフターマーケットの時期。基本的なインフラが普及し終えて、さらなる可能性の追求に取り組み始める。
⑥終焉
キャズムを越えた後にとるべき戦略
ライフサイクルが次の段階へ進んだ時には、とるべき戦略を多少変更する程度では足りない。勝つためには、以前とは正反対の戦略をとる必要がある。
①ボウリング・レーン
この時期の目標は、ニッチからニッチへ、勢いを増しながらトルネードに向かって進み続けることにある。この段階では、新しいパラダイムはまだ一般大衆には普及しないものの、広く世間の目にさらされる。これによって、メイン・ストリーム市場に下地ができる。
新しいパラダイムを普及させるためには、それぞれのニッチに適合したホールプロダクトを100%完成させる必要がある。できる限り多くのニッチ市場に自社のアーキテクチャを標準規格として普及させ、マーケット・リーダーの立場を固めることを目指す。
②トルネード
トルネード期には、何もしなくても需要が絶えない。そのため、この時期はひたすら出荷に専念する。マーケットの細分化やカスタマイズも不要。
トルネード期に引かれた境界線は、何世代にもわたって受け継がれる。そのため、競合他社に打ち勝ち、高い階層に上がることが優先される。ここでのマーケティングの原則は次の通り。
・競合他社を容赦なく攻撃する。
・流通チャネルをできるだけ早く拡大する。
・顧客は無視する。
③メイン・ストリート
メイン・ストリートの市場が開くと、コモディティ化した中核の製品は、引き続きケタ外れの勢いで消費されるが、再び供給が需要を上回る。低価格のコモディティ市場ではマージンをあまり稼げないため、ニッチな顧客を掘り起こすことが重要になる。そこで、薄利多売になっている製品に、適当な「プラスワン」の要素を加えて、差別化を図る必要がでてくる。
各市場における成功要因は正反対である。そのため、マーケティング戦略を立てる時には、今、自分がライフサイクルのどこに位置しているのかを、つかむことが大切である。