日本企業を取り巻く現実
日本のものづくりは、誰かが考え出した製品をいかに上手に作るかに重きを置いてきた。1970〜80年代にかけては、元となる商品やアイデアは欧米にいくらでもあった。しかし、2000年代以降、大きく状況が変わった。
・従来は生産拠点にすぎなかった新興国が、オリジナルの製品を作る生産国になり、さらに消費国に変わった。
・世界で「デジタルものづくり」が急速に進み、「誰でも」「どこでも」「簡単に」、そこそこの製品を作れるようになった。
デジタルものづくりの広がりによって、日本の生産技術の高さは武器にならなくなった。例えば、iPadには高付加価値かつ高価な最先端の部品はあまり使われていない。求められているのは、価格競争に強い汎用部品であり、製品に高付加価値をつけたのは、部品の性能ではなく、製品コンセプトやデザインである。
近年のものづくりは、従来とは大きく異なったものになっている。
日本企業の浮上を妨げる3つの枷
日本企業が浮上する上で、3つの枷がある。
①企業組織
経営環境が変わったら、組織の進む方向を大きく変えるような手を打たねばならない。しかし、現実には、思い切った決断ができない経営者が多い。また、組織が大きくなるほど動きが硬直化し、官僚主義がはびこっていくことも問題である。
さらに、技術者のおごりも問題である。過去の成功体験があり、技術者は技術に強いこだわりを持っている。彼らは「いいものを作れば必ず売れる」と信じており、従来のやり方を変えたがらない。
②規制・制度
旧態依然の規制や制度は、企業の柔軟な対応を難しくする。例えば、独占禁止法は、企業同士の合併や統合を邪魔する可能性がある。
③人々の考え方
今の日本社会は「決められたことをきちんと守り、周囲に合わせられる人」を志向している。例えば、コンプライアンスの問題では、それを気にして、無難な考え方をしがちになる。
どうすればいいのか?
①戦略で負けるな
日本のものづくりが競争力を失っているのは、製品化のためのアイデアで後手に回っているからである。弱点を克服するには、本社機能を強化し、製品開発を含めた戦略を全て本社で決めるといった組織の大改革が必要である。
②秘伝のタレを生かせ
競争力の源泉となり得るタネを持っている企業は多いが、それをわかっていない企業が多い。自社の持つ秘伝のタレを認識し、それをどのようにビジネスに活用するかを検討する。
③人と組織のあり方を変えよ
日本のものづくりは、今の環境に合ったやり方に変えねばならない。そのためには、組織の中で最も影響力のある人たちを動かし、旧態依然の文化に染まっている組織を改革する。