動員の革命
私たちを取り巻く情報環境は、ここ数年のソーシャルメディアの台頭によって大きく変わった。その本質は「ソーシャルメディアがリアル(現実の空間・場所)を『拡張』したことで、かつてない勢いで人を『動員』できるようになった」というところにある。
ソーシャルメディアが社会に与えるインパクトは年々大きくなっている。チュニジアやエジプトのように社会や政治体制が変わる事例も多発している。しかし、ソーシャルメディアさえあれば、社会革命が起きるという見方は、半分間違っている。ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になった訳ではない。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力となったのである。
友達が「いいね!」とボタンをクリックしてくれただけでは、政治は変わらない。投票に行くなり、デモをするなり、行動を起こす必要がある。中東の人々は携帯電話を持って外へ出ていき、現場からデモや暴動の様子、警察や軍の横暴をリアルタイムにレポートし、「変われ!」と叫んだから「革命」が起きた。
ソーシャルメディアが役に立ったのは、最初のきっかけをつくった点である。ソーシャルメディアは、人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるメディアとして機能する。つまり、ソーシャルメディア革命とは、「動員」の革命である。
行動する人にとっては、何らかの行動に対して反応が返ってくるだけで動くモチベーションが維持できる。人間同士が有機的につながっていくと、誰かが飛び出した瞬間に他の人が付いていき、大きなムーブメントに成長する。
動員を起こせ
ソーシャルメディアには、以下の5つの要素がある。
①リアルタイム
情報のシェアが簡単にできるため衝撃的な情報であるほど瞬く間に広がっていく。
②共感・協調
自分の感じていることをリアルタイムに発信するので、感情がネット上に溢れる。
③リンク
感情の輪が広がると、具体的な行動が促進される。
④オープン
参加するのも離脱するのも簡単であるため、敷居が低いコミュニティを形成できる。
⑤プロセス
一度に書き込める文字数が制限されるため、一個の発信が細切れになる。結果、どういう議論を経たのかが「見える化」され、透明性が高くなる。
これらをどう組み合わせるかが、動員の革命を起こすための鍵となる。
動員の未来
「動員」にマイクロペイメント(Suicaのような少額決済サービス)が組み合わせることによって世の中が変わる。マイクロペイメントが結びつくと、簡単に善意を金銭化できるようになる。動員に金銭というものがかけ算されることで、物事が実現する速度が加速する。
現時点では、クラウドファンディングはソーシャルメディアの動員力を金銭に換える、最も現実的なサービスと言える。