商店街は、どのように発展し衰退したのか?
商店街の歴史をひも解きながら、商店街の再生について論考する。
■商店街のはじまり
商店街は決して伝統的なものではない。現代の商店街は、第一次世界大戦後、農村部から都市部へと流れ出る人々を、中間層化して社会秩序に統合するという目的のために形成された。
第一次世界大戦後、農村は長引く不況に苦しんだ。そのため、多くの人々が農業をやめて都市に出てきた。しかし、彼らを吸収するほど都市には雇用がなかった。多くの離農者は商売を営むことになり、零細小売商が大きく増えた。
一方、これは都市住民にとって歓迎すべきことではなかった。当時、物価の乱高下や粗悪品の流通が起きていたが、小売業者の秩序なき増加がその原因と考えられた。都市の消費者は、自己防衛のために協同組合を設立しようとし、零細小売商との対立を生んだ。また当時、圧倒的な資本力によって販売戦略を展開した百貨店も、零細小売商と激しく対立した。
専門性もなく質の高くない、多くの零細小売商は、簡単に事業に行き詰まった。この問題を解決する方法が、商店街だった。小売店を組織化して規模を拡大し、専門性を高める。
1940年代は、小売業の転廃業と免許制・距離制限が実施され「地元商店街」が制度化されていった。
日本の商店街は、地域のシンボルなどと喧伝される割には、家族という閉じた中で事業が行われ、その結果、わずか一、二世代しか存続できないような代物だった。実体としての近代家族が衰退している中で、商店街だけが生き残る訳がない。
家族経営を前提とした規制は、外部者が入り込むことができず、流動性を著しく低くしてしまう。規制は、業界の保護のためでなく、地域で暮らす人々の生活を支え、地域社会のつながりを保証するために存在する。
新しい商店街は、地域社会が土地を管理し、意欲ある若者に貸し出し、資金のバックアップもするという仕組みが作られるべきだろう。
著者 新 雅史
1973年生まれ。学習院大学非常勤講師
日本経済新聞 |
帯 東京大学名誉教授 上野 千鶴子 |
帯2 北海道大学准教授 中島 岳志 |
情報考学 Passion For The Future 橋本 大也 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 7/28号 [雑誌] 丸善丸の内本店「松丸本舗」売場長 宮野 源太郎 |
エコノミスト 2012年 9/4号 [雑誌] 早稲田大学教授 原田 泰 |
WEDGE |
エコノミスト 2012年 9/18号 [雑誌] 慶応義塾大学教授 小熊 英二 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 12/22号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 章 商店街の可能性 | p.7 | 3分 | |
第1章 「両翼の安定」と商店街 | p.13 | 22分 | |
第2章 商店街の胎動期(1920~1945)――「商店街」という理念の成立 | p.49 | 28分 | |
第3章 商店街の安定期(1946~1973)――「両翼の安定」の成立 | p.95 | 27分 | |
第4章 商店街の崩壊期(1974~) ――「両翼の安定」の奈落 | p.139 | 34分 | |
第5章 「両翼の安定」を超えて ――商店街の何を引き継げばよいか | p.195 | 10分 | |
あとがき | p.213 | 6分 |
災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ) [Amazonへ] |
日本の経営 〔新訳版〕 [Amazonへ] |
家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平 (岩波現代文庫) [Amazonへ] |
商店街の再生の道として、外部の人にお店を貸すなどの取り組みをあげている。確かに立地は良いところにあるので、シャッター街にしておくのはもったいない。
2011-12-08
|