創業100年になる同族経営のブラザー工業は、アメリカ法人出身で血縁関係のない社長を抜擢した。そのブラザー工業の現社長である小池利和氏の経営哲学を紹介しています。
名古屋の老舗ミシンメーカーだった、ブラザー工業がどのようにして情報機器メーカーへと変身を遂げてきたか。そして、変化の激しい時代において、どのような経営を行っているのか。
自前主義にこだわらないものづくり経営がわかります。
■名古屋のミシンメーカー「ブラザー工業」の発展
ブラザーと聞いて、最初に連想するのは「ミシン」だが、欧米ではプリンターや複合機などの情報機器で知られている。ミシンから情報機器へと主力事業を変身させたブラザーの売上高の7割近くは情報機器事業が稼ぎ出す。
これまで100年を超える歴史の中で、ブラザーは4度の変身をしながら会社を発展させてきた。
ミシン専業 → 編み機・タイプライターなどに多角化 → プリンターなどの情報機器で電子化・情報化 → 複合機、通信カラオケなどで情報をネットワーク化
この発展の背景には、企業活動で培った技術や知見を生かし、いち早く変身するという姿勢があった。
■綿密な調査よりも試作品の投入
大企業が新商品を投入する場合、多くは「市場調査」を行う。しかし、変化の激しい時代に調査にこだわりすぎてもいけない。いち早く商品を投入するスピード感も求められる。
小池社長が日本から持っていったプリンターを 米国市場に投入した際は、市場調査もしなかった。元々、プリンターの着想は、1人の技術者のひらめきからである。
あまりにも知りすぎて「業界の常識」にとらわれるケースも多い。過去の大ヒット商品を分析すると、業界の常識を持たない素人発想で画期的な商品を生み出したという例が意外に多い。
■「お値打ち感」を出し続ける
ブラザーは時に「情報機器業界のユニクロ」とも言われる。ブラザーの複合機は、日本国内では1万円台から10万円台まであり、職場環境に合わせて利用すれば「お値打ち」である。お値打ちとは安売りとは異なる。価格に対して機能が充実しているのが、お値打ちである。
ブラザーが目指す方向は、利用者の使い勝手を考え、価値と価格のバランスで商品を開発して市場投入することである。
■開発は、具体的なターゲットをイメージして
ブラザーの情報機器は、使う相手をイメージして開発される。現在のブラザーは「SOHO」をターゲットにしている。SOHOのような小規模オフィスでは、使う機種を自分たちで選ぶ。そのため、個人客と同じように、買う人の使い勝手を考え、コンパクトな割に機能が充実した商品を訴求した。
著者 高井 尚之
1962年生まれ。経済ジャーナリスト、経営コンサルタント 日本実業出版社勤務を経て、1996年から花王株式会社と専属契約。企画ライターとして活動する。主に企業情報、ブランド情報などの作成に関わり「経営から現場まで、具体的に花王を解説できる第一人者」ともいわれる。8年間の花王勤務後、組織改編を機に2004年独立。 経営側だけでなく、現場の視点を合わせて企業の本質をわかりやすく伝える情報発信にこだわる。『日経ビジネス』コラム「ひと劇場」など、執筆記事多数。
日経ビジネス |
TOPPOINT |
日経トップリーダー |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
経済界 2012年 5/22号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 4分 | |
真のグローバル化への「正念場」 | p.7 | 8分 | |
第1章 「交流によるチーム一丸」は世界の共通語 | p.29 | 26分 | |
第2章 心は熱く、判断は冷静に | p.69 | 28分 | |
第3章 米国仕込みの「展開力」 | p.113 | 23分 | |
第4章 時に軽佻になり、バランス感覚を保つ | p.149 | 22分 | |
第5章 「ブラザーらしさ」とは何か | p.183 | 21分 | |
第6章 前進なくして未来なし | p.215 | 26分 |