ゴーンが日産再建で学んだ3つの教訓
ゴーンが日産の経営に携わって学んだ教訓は次の3つである。
①優先順位をつけ、問題を絞り込む
危機において最も重要なことは、優先順位をつけ、1つか2つの問題に絞り込んで、徹底することである。日産の最優先課題は、業績を黒字にすることであった。従業員にきちんと説明し、全従業員が優先順位を理解し、合意した。その上で実行に移す、これが危機を乗り越えたカギであった。
②現場の強さを活かす
日産はものづくりの現場の力は強く、優れているとわかっていたため、パイオニア精神や技術の強みは、維持、強化していった。
③お客様の声に耳を傾け、速やかに対応する
信頼性の高い、ユーザーにやさしい車を出すだけでなく、お客様の声に耳を傾け、速やかに対応することが大事である。メーカーの努力だけでなく、お客様の声にも対応することを同時になさねばならない。
ゴーンが残した10の革命
①戦略の明確化と見える化
日産の根本的な問題は、経営陣が方向を見失い、利益を上げるためになすべきことの優先順位を見失っていたことにある。そこで、現状を変えたいと意欲を持つ人材を各セクションから集めてチームを発足させた。また、目安箱、社内報などを通じて、社員とのコミュニケーションを良くすることで、意見を意思決定に反映させた。
②新車攻勢
ゴーンは商品開発が日産復活の核心をなすとして、毎年平均10車種というハイレベルの新車投入を進めた。
③コスト意識の徹底
売れ残りをなくすコスト意識の徹底を図った。また、車の開発期間から納車までのリードタイムの短縮、責任体制の明確化、ルノーとのプラットフォーム共通化によって、効率を高めた。
④系列破壊
出資していた大半の協力企業から資本を引き揚げ、サプライヤーの選択と集中により、大幅なコスト削減を実現した。
⑤ブランド戦略の強化
類似製品と比較し、安く売られていることに疑問を抱き、デザインの改良、マーケティング活動を強化した。
⑥生産・販売のグローバル化
海外にものづくりの技術移転を支援する生産技術センターを設け、現地人の教育を計画的に進めている。海外生産台数はグローバル生産台数の半数を超えた。
⑦ルノーとの提携関係の深化
既存市場での事業拡大に加え、中国やインド、ロシアなどの新興国市場への参入において、両社共通の生産方式の活用、共同出資によるリスク分散を行った。
⑧電気自動車の開発
普通乗用車クラスでは世界初の量販型電気自動車「リーフX」を発売した。
⑨人事の多国籍化
6人の取締役副社長は日本人と外国人が半々。海外拠点のトップは、外国人が72%。
⑩役員報酬の世界標準化
経営者の報酬にグローバルな価値観を導入した。