カルロス・ゴーンが日産自動車の経営に携わって行ったこと、学んだことがまとめられた1冊。
■ゴーンが学んだもの
フランスのルノーと日産の提携は、世界の自動車業界で最も成功したアライアンスと言われる。それは、単に瀕死の日産の再建に成功したということだけでなく、西洋の文明と日本の文明を融合し、グローバル競争時代を乗り切るにふさわしい国際M&Aのモデルケースとなったからである。
日産がルノーと提携した年である99年3月期の日産の決算は約280億円の最終赤字だった。しかし、提携初年度の2000年3月期に680億円の赤字を出してウミを出し終わると、01年3月期には過去最高の3231億円の黒字を達成した。以降、金融危機のあった09年3月期の前まで7年連続黒字、この12年間では生産台数は1.6倍に伸びた。
ゴーンは日本の経営で「人中心の経営」を学んだ。
日本、欧州、米国では文化や企業風土は違う。しかし、共通して言えることは、従業員一人一人が企業に対してオーナー意識を持つことが重要だということである。一人一人がオーナー意識を持てば、会社の目的を理解し、それが正しい方向であるとの認識を共有できる。そこからはじめて活力が生まれ、各人がそれぞれ自分に何ができるかを考えるようになる。大事なのは気持ちの持ち方である。
■ゴーンが日産再建で学んだ3つの教訓
ゴーンが日産の経営に携わって学んだ教訓は次の3つである。
①優先順位をつけ、問題を絞り込む
危機において最も重要なことは、優先順位をつけ、1つか2つの問題に絞り込んで、徹底することである。すべての意思決定は、この優先順位に基づいて行われなければならない。危機の場面では、いろいろな要望、要求が出てくる。この時、何でもすべてやろうとするのは間違いである。
日産の危機に際し、日産リバイバルプランを作り、再生を目指した。その時の最優先課題は、業績を黒字にすることであった。速やかに赤字を止めなければならなかった。これがなぜ優先課題であるのかを、従業員にきちんと説明し、全従業員が優先順位を理解し、合意した。その上で実行に移す、これが危機を乗り越えたカギであった。
②現場の強さを活かす
1999年の時点で、日産はものづくりの現場の力は強く、優れているとわかっていた。日産は日系メーカーとして最初に欧州や米国、メキシコに工場を建設している。常に業界で最先端、第一線にいた。こうしたパイオニア精神や技術の強みは、維持、強化していった。
③ステップ・バイ・ステップ
品質の信頼性は毎年の努力によって、ステップ・バイ・ステップで獲得していくものである。しかし、信頼性の高い、ユーザーにやさしい車を出すだけでなく、お客様の声に耳を傾け、速やかに対応することが大事である。メーカーの努力だけでなく、お客様の声にも対応することを同時になさねばならない。
どれほど一生懸命、良いものを作ったとしても、どこかに問題があるかもしれない。問題が発生したら、速やかに対応する必要がある。
著者 長谷川 洋三
1943年生まれ。ジャーナリスト 日本経済新聞社入社。産業部、ワルシャ支局長兼ウィーン支局長、編集局長付編集委員を経て、帝京大学教授。学習院大学非常勤講師。 ラジオNIKKEI「夢企業探訪」メインキャスター。J‐CASTニュース編集委員。2011年より日本外国特派員協会(FCCJ)第2副会長
日本経済新聞 |
週刊 ダイヤモンド 2011年 12/24号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
プロローグ | p.11 | 9分 | |
第1章 ゴーンの12年と3つの教訓 | p.27 | 13分 | |
第2章 ゴーン日産の12年 | p.49 | 9分 | |
第3章 ゴーンが残した10の革命 | p.65 | 49分 | |
第4章 ゴーンがやったこと、やらなかったこと | p.151 | 7分 | |
第5章 トヨタ大量リコール問題の教訓と品質確保への挑戦 | p.163 | 25分 | |
第6章 日本経営の国際化の系譜 | p.207 | 7分 | |
第7章 ゴーンの経営と変わる日本的経営 | p.219 | 23分 |
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