ほとんどの投資家は勝てない
伝統的に資産運用の世界では、市場に勝つことができるという基本的な信念が支配的だった。しかし時代は変わり、今日ではこの前提は、プロの運用機関にとってさえあてはまらない。
個人投資家がマーケットの90%を占めていた1950〜60年代に、プロの投資家が大きな利益を上げることは当然だった。しかし、今日では投資信託や年金基金、ヘッジファンド等が飛躍的に拡大した。ニューヨーク証券取引所における売買代金は、機関投資家が9割、個人投資家が1割となった。さらに取引総額の75%はトップ100社の機関投資家によって占められている。
数多くの強力な同業者がしのぎを削る機関投資家の世界で、資産運用は「勝者を目指すゲーム」とはならない。プロの資産運用は「敗者にならないことを目指すゲーム」へと変質した。
「勝者のゲーム」では、勝者のウィニング・ショットにより勝負が決まるが、「敗者のゲーム」では敗者のミスによって勝負が決まる。他の投資家のミスに、相手よりも素早く乗じることが、勝つための秘訣となる。
新しいルールの下では、競争が厳しく、投資顧問料や売買手数料、その他のコストを取り返すのが難しい。そのため、運用機関全体の75%の成績は市場平均を下回る。
長期的に運用せよ
投資で成功する秘訣は、証券会社や投資信託から送られてくる膨大な宣伝広告、ファンドの運用成績、市場の見通しの類を一切無視することである。その上で、投資家自身の最大の目標を達成する上で、長期的に最も可能性の高い運用方針を策定する。
短期的には、マーケットの予期せざる展開や出来事は避けられない。しかし、長期的には、運用成果は「平均へ回帰」する。投資で成功する上での最大の課題は、頭を使うことではなく、感情をコントロールすることである。乱高下するマーケットに惑わされず、特にその「天井」と「底」において、当初の投資政策を堅持し続けることが必要である。
運用方針の策定にあたっては、株式と債券等への長期的な資産配分が最も重要になる。個別ファンドや銘柄の選択は、コストがかかる割に効果はほとんどない。
インデックス・ファンドを活用せよ
投資で勝ち続けるに、最も簡単な方法はインデックス・ファンドを活用する方法である。インデックス・ファンドを使えば、トップ・プロをスタッフに抱えるのと同じメリットが得られるだけでなく、安心感もあり、手数料も税率も安い。
平均程度のリターンしか得られないと、不人気であるが、長期的に見れば、ほとんどのプロの運用機関よりも、そして個人投資家と比べればはるかに高いリターンを収めることができる。全米随一の投資家ウォーレン・バフェット自身も、個人投資家はインデックス・ファンドを活用すべきだと主張している。