パーフェクト・フィットをめざせ
ザッポスを成功に導いた要因の一つは、考え方や感覚が似た人間を揃えて、共通の目標に向かって前進させることにある。目的と人材の「パーフェクト・フィット」を重視している。
パーフェクト・フィットのためには、会社のコアバリューを明確にして、それに共感できる人間を採用することが重要である。ザッポスでは、年間約450名の求人に対し、応募者が3万人にのぼる。採用では技能よりも、文化が合うかどうかが優先される。
採用が決まった後、経理担当でもIT技術者でも、全員が1ヶ月におよぶ研修に参加する。会社の長期的な展望を理解するだけでなく、2週間にわたって実際の顧客から電話注文も受ける。
さらに研修後、ザッポスは新人に決断を求める。およそ4000ドルを受け取ってザッポスを去るか、担当部署に向かうか。研修生は自分がザッポス文化に合うかを判断する。お金を受け取って辞めていく新人は全体の2%だという。
迅速で手間いらずのサービスを
トニー・シェイは「ワオ!」は顧客忠誠心の重要な側面であり、おろそかにできないと考える。そのために「顧客の注文を最初から正確に処理し、希望どおりの品を届けること」、「顧客の手間をなるべく減らすこと」を追求する。
ザッポスで行われているサービス改善の施策には次のものがある。
①ユーザー・エクスペリエンス(UX)の追求
ユーザー調査や試行錯誤を繰り返し、UX向上を目指している。普通のサービスと優れたサービスの分かれ目は、顧客のふるまいをしっかり観察するかどうかである。
②文章と写真による詳細な商品説明
毎日16000点の画像が撮影され、商品の詳細情報を提供している。
③送料無料・返品無料
④サービス速度の重視
アメリカ国内1〜3日で配送。ウェブサイトの読み込み時間は1.9秒とDell.com3.3秒などと比べ速い。コールセンターの着信80%を20秒以内に応答。
パーソナルに踏み込め
注文どおりに商品が届くだけでは顧客に忠誠心は生まれない。顧客がワオ!と感動するのは次のどちらかが満たされた場合である。
・サービスが期待を上回った時
・心が通いあったと感じた時
しかし、顧客の期待を上回るサービスは一度やってしまうと、次からは「期待どおり」「当たり前」になる。そのため、ザッポスは自社のサービスが常にサプライズを与えられるよう努力している。
・しくじった時、顧客を取り戻すまでリカバリーの努力を続ける
・翌日配送(通常4〜5日と説明)
・プレゼントの同梱(レッドブル、ビーチサンダル等)
最悪なサービスと見事なサービスを分けるのは、損得勘定を抜きにしたほんのちょっとの気づかいである。取引よりも交流を大切にする企業には、自然と人が集まってくる。