戦略
日本軍の戦略性は曖昧であった。戦略が明確であれば、目標達成を加速させる効果を生み、逆に曖昧ならば混乱と敗北を生み出す。
日本軍は「真珠湾攻撃」も含めて、開戦初戦には比較的多くの戦闘で勝利した。また、太平洋の南洋諸島を、委任統治領とし多数の基地を建設した。しかし、米軍が占領したのは、25の島の内8つ。残りは放置され、戦略上の意味がなかった。目標達成につながらない勝利のために、戦術を洗練させても意味がない。
ミッドウェー作戦では、基地攻略と米軍機動部隊の殲滅とで優先順位が未設定。一方の米軍は「空母を最優先で沈める」という効果的な指標を設定していた。指標を正しく決めることが「目標達成につながる勝利」を決める。
日本人と日本の組織は「一点突破・全面展開」という流れを採用しがちである。これは、日本は体験的学習で偶然に勝利することができるためである。しかし、意識せずに発見した「経験則による成功法則」では、一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。
思考法
改善を続けることで生まれる洗練は、日本人が民族的文化として持つ美点の一つである。零戦の戦果を支えた要因に「パイロットの優れた技能」が挙げられる。操縦技能、射撃精度を極限まで追求した。
これに対して、米軍は「パイロットに高い操縦技能を期待しないでも勝てる」という発想転換をした。砲弾、レーダーの開発により、米軍はゲームのルールを変えた。
改善を継続することで「小さな変化」を洗練させていく日本軍は「劇的な変化」を生み出す米軍に敗れた。
型の伝承
日本組織の中には、過去発見されたイノベーションを戦略思想化し、「虎の巻」としたい欲求が存在する。「型の伝承」のみを行う組織が「勝利の本質」を伝承できていないことで、強みを劣化・矮小化させて次世代に伝えている。
体験的学習だけに依存する場合、「成功体験のコピー・拡大生産」こそが戦略だと誤認してしまう。
組織運営
日本軍の上層部、作戦立案担当者は「現場を活かす」ことが不得手であった。ガダルカナル作戦では、約1000キロの遠距離にある航空隊に攻撃を命じ、熟練パイロット、戦闘機を多数失った。
日本軍の組織運営の失敗に共通する点は2つある。
①上層部が「自分達の理解していない現場」の考えや意見を蔑視し、傲慢であった
②上層部が「現場の優秀な人間の意見」を参照しない
メンタリティ
「空気」は体験的学習による連想イメージを使い、合理的な議論を行わせずに、問題の全体像を一つの正論から染め上げてしまう効果を持つ。日本軍は、疑問を唱えることを自己抑制し、自分達は絶対に大丈夫だと楽観的な幻想を持っていた。
・都合の悪い情報を封殺して無視する
・希望的観測に心理的に依存していく